各省庁の令和3年度の予算の概算要求が9月末に提出・公開されました。各省庁の総額は105兆円を超え、過去最大の規模となりました。
概算要求では各省庁の次年度の事業と経費の概要が示されており、次年度にどのような補助金が、どのような規模で助成されるかの大まかな目安にもなります。
本記事ではレジリエンス・BCP(事業継続計画)などに関する各省庁の令和3年度の事業を抜粋します。
目次
災害時に備えた社会的重要インフラへの自営的な燃料備蓄の推進事業費補助金(経済産業省)
概算要求額 | 80.0億円 (昨年度:30.0億円+臨時・特別の措置18.5億円) |
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概要 | 商業施設や公共施設などの、災害時に多数の避難者・避難困難者が発生する可能性のある施設に燃料備蓄のための設備を導入し、災害に対するレジリエンスを強化するための補助事業です。LPガス災害バルクや石油タンク、自家発電設備などの設置が支援されます。 緊急時にすぐに利用できる自家発電設備を完備することで、災害時に公共インフラが寸断し、電気やガスの供給が停止しても炊き出しや照明の利用などができるようになります。 気候変動等の影響を受けて自然災害が激甚化する中、リスク耐性を高めることが求められています。 補助率は2/3~1/2程度となっています。 |
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出典:経済産業省ホームページ
https://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2021/pr/en/enecho_nenryou_31.pdf
災害時の強靱性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業費補助金 (経済産業省)
概算要求額
28.1億円 (新規)
概要
停電対応型の天然ガス利用設備(ガスコージェネレーションシステム、燃料電池etc.)の導入・強化について補助が行われます。
ガスコージェネレーションシステム
天然ガス等を燃料として電気をつくり、発電の際に発生する熱を暖房や給湯などに利用することで燃料を最大限効率的に利用するための装置です。コージェネとも呼ばれます。
電気やガスの供給が停止した場合の発電装置として機能するほか、CO2を排出しないクリーンな発電を行い、排熱利用もできるため、常時稼働の電源としても注目されています。
中圧ガス導管などの耐震性の高いガス供給を受けている民間事業者の一部が対象となる見込みです。災害時以外もクリーンなエネルギー源として利用することができるため、新政権が重視する”脱炭素社会”の実現に向けても有用です。
出典:経済産業省ホームページ
https://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2021/pr/en/denga_taka_01.pdf
地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する避難施設等への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業 (環境省)
概算要求額
92.0億円 (新規)
概要
公共施設(避難施設、防災拠点等)への再生可能エネルギー設備やコジェネレーションシステム等の導入が補助されます。補助率は2/3~1/3となっています。
出典:環境省ホームページ(https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/energy-taisakutokubetsu-kaikeir03/matr03-01.pdf)
既存住宅流通・リフォーム市場の活性化 (国土交通省)
概算要求額
92億円
概要
リフォームの支援について、耐風改修や蓄電池設置などの防災性・レジリエンスの向上に関するものが明示されています。
参考:https://www.mlit.go.jp/common/001364259.pdf#page=51
https://www.mlit.go.jp/common/001364259.pdf#page=51
「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化計画」が閣議決定されました
(2020年12月11日)
2018年に開始した「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」が2020年で終了することを受け、政府は新たに2021年度から2025年度までの計画として、「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化計画」を閣議決定しました。5年間で15兆円程度を目途にしており、その内訳は下の表のとおりです。
出典:内閣官房ホームページ
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokudo_kyoujinka/5kanenkasokuka/pdf/taisaku_gaiyou.pdf
インフラの老朽化や気候変動により激甚化・頻発化する自然災害、南海トラフや首都直下などの大規模地震などに備えることを第一の目標としつつも、2050年までのカーボンニュートラルの実現に資する計画とすることも明示されています。
この5か年の対策は、政府が2021年1月の国会での成立を目指している令和2年度第3次補正予算から取り組んでいくこととされています。また、この対策では、政府が直接事業を行う財政措置に加え、税負担に拠らない財政投融資や、民間事業者による事業が想定されています。
詳細な申請方法・条件については今後の発表をお待ちください
本記事で扱った補助事業の多くはエコ・プランの事業と関連があるものです。
これらの事業の多くは今後、各庁や民間団体から助成事業として申請基準・方法が公開されることになります。追加の情報が発表され次第、本ページにて公開して参ります。