2023年夏、「エアコンが冷えない」というお問い合わせを数多くいただきました。現地に駆け付けたエンジニアが室外機の吸い込み温度を計測すると、なんと58度!
騒音を気にして室外機の周りに囲いを設置したことが吸い込み温度上昇につながり、エアコンの冷房運転可能範囲を超えたために「冷えない」状態になったようです。
室外機のすぐ目の前にブロック塀や壁、荷物等があると、簡単に吸い込み温度が50度を超えてしまう気温が続いています。
今回は各メーカーの業務用エアコンカタログから最新の機器の冷房可能温度をご紹介します。
ダイキン工業株式会社 様 50度
【夏】高外気タフネス冷房(-5℃~50℃)
高い熱交換能力を持つ室外機で、高外気環境でも運転できるように設計されています。
外気温50℃でも冷房運転し続けます。(冷房能力を保証するものではありません)
【冬】低外気タフネス暖房(-25℃)
室外機に搭載された熱交換器の高い暖房能力により、外気温がー25℃の厳しい環境でも運転が行えます。(暖房能力を保証するものではありません)
三菱電機株式会社 様 52度
三菱電機株式会社様の製品ページには、”外気温52度まで冷房運転可能(乾球温度)、外気温43度まで定格冷房能力キープ”と記載がありました。
引用元:三菱電機株式会社様 製品ページ
株式会社日立製作所様 52度
株式会社日立製作所様の製品ページには、乾球温度で52度まで冷房運転可能、定格冷房能力キープは43度まで”と記載がありました。
株式会社東芝様 52度
株式会社東芝様の製品ページには、外気温52度まで冷房運転可能、外気温46度でも定格能力を確保”と記載がありました。
※各メーカーの冷房運転可能温度は機種により異なる可能性があります。詳しくはお問い合わせください。
最後に
近年、各地で40度を超える最高気温が観測されています。気象庁が発表する気温は温度計を直接外気に当てないようにして測定する方法がとられているため、実際の外気温、アスファルトの上はプラス5~10度程度暑いと予想されます。
実際の外気温についてはこちらをご覧ください。
「【熱中症対策】空調服って涼しいの? 作業場の温度は実際、何度?」
地球温暖化の影響と思われる世界各地の熱波は、今後さらに高温化し頻度が多くなっていくことが予測されています。業務用エアコンの大手メーカーの多くが最新の機器で冷房可能範囲は50~52度としていました。
50度や52度を超える気温でも冷房が可能な技術革新を期待する一方、「人間の技術力は地球の気温上昇に追いついていけるのか」は、誰にもわかりません。ただ、追い付けたとしても、最新のエアコンを、冷房限界を超えるたびに導入するのは現実的とは言えません。
近年、多くの家ではエアコンをつけるのが当たり前になっています。熱中症を防ぐための大切な対策でもあります。エアコンがある環境下で育った若者たちは、夏が暑くなっても「エアコンがあるから大丈夫」と思い込んでいるかもしれません。
通常の室外機設置環境でも、室外機の吸い込み温度がエアコンの冷房運転可能限界の50度や52度を超え、「エアコンが冷えない」事態が続出したら、熱中症搬送者数や死者が急増するかもしれません。
そうなったとき、エアコンに責任を取ってもらうことはできません。エアコンの先にあるリスクについて考え、少しでも気候変動を抑える取り組みが必要とされています。
※各メーカーの冷房運転可能温度の算出条件まで確認していません。外気温を測定した空間の条件設定により変動する可能性がありますが、このトピックでは各社が公開しているカタログデータを単純に比較したものとなっております。ご了承ください。
参考:気象庁
これからの気温の変化