脱炭素経営を牽引するTCFDやCDPやSBTでは、生物多様性や森林に対する関心が高まっています。
TCFDでは、ネイチャー版のTNFDが発表され、CDPでは、生物多様性に関する設問が増え、SBTでも、ネイチャーSBTsの開発が進んでいます。
これらの動きが意図するものは、生物が多く生息する原生林の伐採に関与する経済活動を特定し、その影響を減らしていくことと、持続可能な森林資源の利用、管理を促す狙いがあります。
そこで、日本国内に流通する木材がどこから来ているのか、調べてみました。
国内流通木材の約6割が海外からの輸入
令和3年の林野庁の資料によると、国内で流通する木材の6割が輸入でした。総需要は前年より増えており、国内生産、輸入量ともに増加していました。
杉1本から取れる木材の量を、22m、直径25センチ、0.5746m³として換算した場合、年間で約 8千4百万本の木材を、海外から輸入していることになります。
海外のどこから仕入れてる?
木材は、主に9つの国、地域から輸入していました。丸太、製材、合板、集成材ごとに、輸入先が異なっており、林野庁の「木材貿易の現状」では、それぞれの材料ごとの傾向を紹介していました。
世界はマレーシアの違法伐採に警戒している?
林野庁の「木材貿易の現状」では、国ごとの傾向も報告しており、マレーシアのページに、「マレーシアの合板生産量は資源の枯渇や違法伐採対策の強化により減少傾向」というフレーズが記載されていました。
つまり、過去のマレーシアからの合板は、違法伐採によるものだった可能性を示唆しています。
企業の事業活動において、輸入木材の合板を使用している場合、生産地がマレーシアかどうか、違法伐採による木材ではないか、確認することが、TNFDやCDPの対応時、重要になりそうです。
マレーシアの合板と同じくらいの合板の量を輸入するインドネシアでは、「2001年から丸太輸出を禁止(1985~1992年にも禁止)(※人工林から生産された丸太を除く)。」と記載がありました。
つまり、2001年以前の丸太は、人工林から生産された丸太ではない可能性(原生林)を示唆しています。
違法伐採については、国際的にも警戒し、対策を打っているようです。
最後に
今回は、特に、マレーシアや、インドネシアについて、少し詳しくご紹介しました。
これらの数字は、統計上のマクロな情報なので、実際の状況は、現地に行き、調査しないと分からない部分があります。TNFDでは、現地の情報まで開示を求めています。
グリーンウォッシュと言われないためにも、企業活動において、輸入木材が重要な位置づけにある場合は、マレーシア、インドネシアに限らず、現地の状況を調査、確認する必要がありそうです。