弊社は2022年、CDPの自主回答に挑戦しました。
これまでに
◆【CDP回答で”TCFD”同時対応!】やってみてわかった!~きっかけと事前準備対策の事例
◆【CDP回答で”TCFD”同時対応!】イメージしやすい!回答実体験!
今回は回答に役立ったシナリオ(無料で入手できたもの)と、実際やってみて感じたCDP自主回答のメリット、デメリットをご紹介します。
シナリオは沢山の種類があるので、どれを使えばいいの?と分からなくなります。正解はない中で、弊社の事例が、CDP自主回答をご検討中の企業の方々の参考になれば幸いです。
目次
CDPはTCFDを網羅しているため、シナリオ分析が必要!
CDPの質問書は、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の要求事項を網羅する形で、構成されています。
TCFDの開示要求事項には、シナリオ分析が含まれております。
シナリオ分析とは、企業など組織の戦略を立案する上で、将来想定されるリスクや機会を、複数の異なる条件で分析し、計画に生かす手法です。
◆シナリオ分析の詳細についてはこちら
気候危機のリスクを、企業価値に反映する手法【TCFD】とは?
◆シナリオ分析について、環境省からも非常に参考になる資料
【 TCFDを活用した経営戦略立案のススメ 】が出ています。弊社もこの資料を基にシナリオ分析を実施しました。
無料で役立ったシナリオに役立つパラメータの紹介
シナリオ分析の条件設定に必要なパラメータは、【 TCFDを活用した経営戦略立案のススメ 】の後半部分に沢山紹介されています。
有料のものから、無料で公開されているものまで沢山の様々なパラメータがあります。
沢山ありすぎると、どれを使えばいいのか、分からなくなってしまいます。
弊社は、それらのパラメータを一通り確認し、無料で確認できるデータで、わかりやすいもの、そして、使用頻度が多いものを参考に、シナリオ分析を行い、CDPの回答に記載しました。
主に使用したパラメータが下記です。
②IEA World Energy Outlook (WEO 世界エネルギー展望)
③IEA Energy Technology Perspectives ETP(※クリーンエネルギー技術)
※業種等により、適切なパラメータは異なるため、あくまでも参考です。
パラメータには、多種多様な分野の将来予測が、論文や科学的検証を元に記載されており、自社の事業に直接、または間接的に影響を及ぼす要素も含まれているので、将来の企業戦略を立てる上で、非常に参考になりました。
リスクと機会、企業戦略の内容は?
シナリオ分析のリスクと機会、企業戦略の部分は、一担当者では作成することはできないので、経営層である上司にお願いしました。
CDPの回答でいうと、ガバナンス、リスクと機会、事業戦略の部分に該当します。この部分は、経営層である上司が担当し、回答を作成しました。
CDPの回答の絶対的条件として、経営層を巻き込む必要があります。そこが最も重要なポイントです。
※どうやって、リスクおよび機会を抽出し、事業戦略を作成したのか、については、上司に記事作成を依頼中です。
CDP回答 請求書発行と提出
CDPの回答内容について確認する際、活用した資料は下記です。
◆CDP 2022年企業向け気候変動質問書回答に向けて(詳細版)
ver. 22022年5月30日作成CDP Worldwide-Japan
数字を出すことに必死で、出せたことに満足し、合わせるべき数字が合わない、といったことがありました。
最終確認も日程に余裕をもって、実施することをお勧めいたします。
上記資料で確認しながら、社内の確認も完了したら、回答内容を提出する前に、することがあります。
それは、回答ダッシュボード内の【請求書発行】ボタンから、請求書を発行することです。請求書を発行しないと、回答内容の提出ができない仕組みになっています。
支払いについては、回答の提出から90日以内、もしくは2022年9/30の早い方が期日でした。回答締め切りが7/27なので、支払い期日までは余裕があります。
回答内容の最終確認が終わり、請求書を無事発行したら、【提出】ボタンを押して回答内容を提出します。
※より詳しい内容はこちら:CDP オンライン回答システム(ORS)(2022年版)
スコアリング結果の公表と検証
2022年の質問書の回答内容は2022年11月2日にCDPの公式ウェブサイト上に公開され、スコアリング結果については2022年12月13日に公表されました。
スコアリング結果の案内と共に、簡単なスコアレポートが提示されました。内容としては、C0からC16の大枠の設問に対して、平均と比較し、どの設問が上回っていたか、あるいは下回っていたか、といったグラフでした。
このスコアレポートは、来年の回答に向けて、改善の目安、参考になりました。
回答のメリット
CDPの質問書の回答を提出した後、一緒に回答に挑戦した執行役員から最初に言われた内容は下記の内容でした。
CDPやってよかったよ!まず弊社のような中小企業が回答に取り組んだ結果を大手の企業と同様に評価してもらえることが単純にありがたいです。回答を通して多くの学びを得る事ができたのも非常に有益でした。
執行役員が感じたCDP質問書回答のメリット
①脱炭素社会への移行するうえで必要な事、考えなければいけない事が体系的に網羅されている点
②同様の質問に回答している企業を閲覧しベストプラクティスを吸収できたという点
③経営戦略の脱炭素化が進むことで現場でも具体的に脱炭素化の意識が高まったという点
その他のメリット
・TCFDの開示要求に対応できる
・SBT認証済みの場合、毎年の進捗報告媒体として活用できる
・経営層や社外の取引先の理解を得られやすくなる
回答のデメリット
CDP回答のデメリットは、やはり、時間と労力がかかってしまうことです。
ただ、一度回答のベースができれば、次年度からは、回答にかかる時間や労力は軽減されると考えられます。
最後に
CDPの質問書の回答は、基本的に東証のプライム市場に登録されている企業など質問書送付対象企業と、その企業の要請でサプライチェーンに対して質問書が送付される、サプライチェーンプログラム対象企業となっています。
有価証券報告書へのTCFD関連情報記載の義務化に伴い、該当企業がCDPの回答に挑戦することも考えられますが、どちらにしても、投融資や株価といった外部評価のために実施している側面があります。
中小企業のCDP自主回答の目的は、よいスコアをとるために挑戦するものではなく、世界の脱炭素経営の本質を理解し、企業の未来のリスクや機会を考え、計画を立てる事にあると考えます。
例えスコアが悪くても、挑戦することに、企業としての大きな意味がある、そんな取り組みです。
持続可能な企業経営をお考えの中小企業の方々に、是非CDPの自主回答をお勧めいたします。