弊社は2022年、CDPの自主回答に挑戦しました。
前回は◆「【CDP回答で”TCFD”同時対応!】やってみてわかった!~きっかけと事前準備対策の事例」をご紹介させていただきました。
今回は実際の回答について、つまづいた部分、役立った部分について、対策を踏まえ、ご紹介します。
弊社の経験が、同じように脱炭素経営を目指し、CDPの自主回答をご検討されている企業様の参考になればと思います。
目次
CDP自主回答の申し込みと回答ダッシュボードの確認
CDP自主回答の申し込みについては、■【CDPの質問書】届いてなくても ” 自主回答 ” できる!どうやるの?をご覧ください。
申し込みを済ませ、CDPのアカウントを作成し、サインインできるようになると、CDP側で回答ダッシュボードの設定をしてくれます。
CDPの2023年の質問書の内容は、2023年1月20日に公開されました(英語版のみ)。ただ、回答ダッシュボードに入力できる状態になるのは4月中旬頃です。
3月下旬から4月中旬にかけてCDP事務局から、「ここから質問書の回答を進めてください」といった回答ダッシュボードオープンの案内メールが届きます。
通常の質問書の場合、【CDP Japan】から回答企業へ案内が届くようですが、自主回答の場合、【イギリスのCDP本部】から案内が来ることになっています。
「質問書のダッシュボードがオープンしました」というメールが届いたら、自主回答についての個別の案内が届いているかご確認ください。
なかなか個別の案内が届かない場合は、早めにCDP Japanにメールなどして、本部に確認してもらいましょう。回答には期限があるので、少しでも早く回答に着手することをお勧めします。
回答ダッシュボードにアクセスして感じたこと
実際の回答ダッシュボードに入力を開始した時、「これは、時間かかる・・・」と思いました。回答のイメージはしていたものの、選択肢によって、設問が変化することも、全体の把握が難しいと感じました。
また、この回答が会社の見解として、公表され、評価されると思うと、解答欄に記載した文章が、何度見返しても、修正しても、確信が持てず、回答が進みませんでした。
共同編集者を登録!
案内が届いた後、メインで回答する人を回答ダッシュボードに登録します。
CDPの回答ダッシュボードは、複数人登録することができ、一緒に回答することができます。共同編集者を登録した場合、問題なく、回答ダッシュボードにアクセスできるか、確認します。
(うまく登録できない場合は、早めにCDP Japanへ問合せをしましょう)
弊社の反省点
最初は1人で回答に挑戦したのですが、行き詰まり、上司を共同編集者に登録しました。ただ、登録がうまくいかず、1週間弱、回答が進みませんでした。
回答の仕方が分からない質問はこれを参照!
CDP質問書の質問の中には、どのように回答すればいいのか、イメージが付かないものも多くあります。
そんなときは、同業のCDP質問書回答を公開している企業について、CDPウェブサイトで検索し、複数社、見本として、どのような回答をしているのか、確認すると、イメージがつきます。
他社の取り組みを確認できることは、自社の取り組みの参考になります。
※氏名とメールアドレスによるアカウント登録が必要です。
ダッシュボードの回答は英語?日本語?設問の回答次第で、追加設問がある!
回答は英語でも日本語でも、回答できます。どちらかに統一する必要がありますが、回答内容を見てほしい方が海外にも多い場合は英語、日本国内で十分な場合は日本語で回答することが一般的です。
CDPの質問書ダッシュボードの中で、YES,NOの選択がいくつもあり、それぞれを選択すると、別の質問が次々に出てきます。
質問書がオープンした直後、全体の質問書のボリュームを確認することはできますが、回答の選択肢によって、ボリュームが変化するので、回答の計画を立てる際は、余裕が必要です。
2022年の提出期限である7/27当日は、CDP回答ダッシュボードがうまく機能せず、提出できない事態が発生しました。
弊社は前日提出済みでしたが、当日ギリギリで計画していた企業は、影響を受けたと考えられます。
ダッシュボードの回答を社内でどう確認する?
回答内容を他の人に確認してもらう場合、回答ダッシュボード内容をエクスポートできます。また、確認してもらったデータをインポートすることも可能です。
とはいえ、膨大な質問を毎回エクスポートしたり、インポートするのは、それはそれで手間がかかります。一度にまとめて確認するのも、確認内容が多すぎて、一度で確認することは現実的ではありません。
設問によっては、他部署の確認や集計も必要なため、順番通りに回答が進むわけではありません。
回答作成中はどれ?回答は作成できたけど、上司に確認できていないものは?確認ができたものは?
これらをどう把握し、管理しながら、回答や確認をするのがスムーズか、試行錯誤しました。
試行錯誤1
①エクスポートデータで確認する方法
➤部分的な確認のたびに、エクスポートして、確認してもらうのは、確認する側が「どこ?」と混乱します。
膨大なデータ量になります。また、メモが反映されません。メモがないと、設問に対して、どのような考え方や集計方法で回答を作成したか、自分でも分からなくなります。
どのように集計したのか、情報元のURLやデータ抽出条件等を記録しておくことが重要です。
誰かに確認をしてもらう時や、業務を引継ぐ時も、必要になります。
試行錯誤しながら、回答することにいっぱいいっぱいで、忘れがちなので、気を付けていただくのと、そうした記録や整理する時間も含めて、余裕をもって計画を立てることをお勧め致します。
試行錯誤2
②質問の番号と設問内容、状況のエクセルシートを作成し、【◎2者確認済み 〇1者確認済み △回答中 ×わからない】というようなフェーズで管理
➤設問の回答次第で、次の設問も変わるため、設問が変化するたびに、修正する必要がありました。どこが追加され、どこがなくなったのか、気づかないこともありました。
弊社の確認方法
最終的には、回答案ができた設問の番号や設問内容と回答案を1つ1つ(もしくはC6.1~C6.5までというような一連で)チャットやメールで、画面の切り取り画像と共に報告し、上司と確認をしました。
確認ができた設問については、コピーしてエクセルに貼り付け、どのデータをどのように集計したのかも含め、エクセルに記録しました。
■エクセル記録のイメージ
回答に要した時間
弊社は2名でCDPの回答に挑戦しました。1名は執行役員で、ガバナンスやリスク、機会、戦略部分を主に担当し、もう1名はSCOPE1,2,3の算定データの部分を担当しました。
要した時間は、合わせてざっくり300時間くらいです。(情報収集を含めるともっとかかっている)
感覚としては6月、7月はCDP質問書回答が業務の中心でした。
「そんなデータ、どうやって出せばいいの?」が沢山!
今まで自社のSCOPE算定や再エネ関連のデータ集計で、増えた原因や、内訳など、様々な角度からデータを分析していましたが、それを超える質問がいくつもありました。
「排出削減活動の総数、実施段階の削減活動については推定排出削減量」
「年間経費節減額」
「必要投資額」
「世界総排出量(スコープ1と2の合計)の変化の理由を特定し、理由ごとに前年と比較して排出量がどのように変化したか」・・・
『回答に必要なデータは、何か?』
『どうやったら、そのデータが出せるか・・・』
一つ一つ検討し、様々なデータを出しながら、回答に使えるデータを見つけていきました。
請求書から手入力でデータを起こし、確認する項目もありました。
来年からの回答に備え、会社のデータ管理の方法を一部変更してもらいました。
最後に
今回は、CDPの質問書に回答してみて、どうだったか、躓いた部分や、どう対応したかを、あくまでも参考までにご紹介しました。CDPの自主回答をご検討されている企業様の回答のイメージにつながり、少しでもハードルを下げられれば嬉しいです。
すでに何年も回答している企業様の中には、「もっと良い方法があるよ」といったご意見もあると思うので、差し支えなければ是非、教えてください。
次回は、CDP回答提出や、参考にしたシナリオ(無料)や、全体を通してメリットやデメリットといった内容をご紹介予定です。
■【CDP回答で”TCFD”同時対応!】やってみてわかった!~きっかけと事前準備対策の事例
■【CDP回答で”TCFD”同時対応!】回答に役立った無料シナリオ パラメータ&実感したメリット!
■【CDPの質問書】届いてなくても ” 自主回答 ” できる!どうやるの?
■【TCFDシナリオ分析 テンプレート】6つのステップ ①準備と設定 ②リスク重要度評価