フロン排出抑制法では、点検、整備時のフロン漏洩が、全体で1000t-CO₂を超える場合は、国に報告することが義務付けられています。
この1000t-CO₂とは、業務用エアコンを何台くらい所有していると、該当する可能性があるのでしょうか。また、漏洩量はどのように予測すればよいのでしょうか。
これまで、漏洩量を把握していなかった管理者の方の中には、「もしかして、うちも1000t-CO₂漏洩しているかも?!」と気になっている方もいるのではないでしょうか。
今回は1000t-CO₂の目安と、漏洩量を予測する計算方法について、ご紹介させていただきます。
目次
1000t-CO₂は冷媒量に換算するとR410Aが478㎏ !
1000t-CO2の漏洩量とは、二酸化炭素換算で1000t漏洩させた、という意味となります。冷媒(フロン)は種類によって、地球温暖化係数(GWP)が異なります。
地球温暖化係数(GWP)とは二酸化炭素を基準として、どれだけ温暖化に影響を与えるか表した数字です。
業務用空調機で良く使用されるのが、R410Aという冷媒で、このR410Aの地球温暖化係数は2090です。つまり、R410Aは二酸化炭素の2090倍の温室効果がある、ということになります。
つまりCO₂1000t分を2090倍で割ると0.478t、㎏にすると、478kgのR410Aが、CO₂1000tと同じ影響ということになります。
R410Aを478kg漏洩させると、報告義務が発生します。
フロン漏洩量を予測する計算方法
フロン漏洩量の予測は、業務用エアコン設置時に、エアコン内に予め封入されている冷媒の量(初期充填量)と、設置時に配管の延長等で冷媒を追加した際の追加充填量を足し合わせた、冷媒の量に、年間の漏洩率(機種ごとに異なる)を乗じることで、予測することができます。
初期充填量の確認方法
初期充填量とは、新品の業務用エアコン内部に予め封入されている冷媒(フロン)の量です。
初期充填量は、エアコンの室外機に貼ってあるステッカーシール『銘板(めいばん)』に記載されています。
初期充填量で対応できる配管の長さも機器により決まっており、その長さ以内であれば、追加充填の必要なく設置することができます。
室内機と室外機の距離が遠く、配管の長さが規定以上になる場合は、冷媒を追加します。これが【追加充填】です。
フロン排出抑制法では、追加充填をした場合、設置業者は管理者に追加した冷媒(フロン)の量を報告することになっています。
設置業者から設置時に提出された報告書をご確認ください。
フロン漏洩率って?
漏洩量を予測する際に使用する漏洩率については、環境省の資料で業務用エアコンタイプごとに設定されています。環境省が公開している資料の漏洩率を使用すると、ビル用パッケージエアコンの場合は、年間3.5%となります。
※出典:一般財団法人 日本冷媒・環境保全機構 冷媒管理システム上での操作方法について 6-15 CERTIFICATE 4ページ
この漏洩率は、平成21年の調査を元に設定されたもので、平成25年のフロン排出抑制法の施行の前の漏洩状況を反映したデータとなっています。
故障や解体工事などで、冷媒(フロン)が全て大気に放出されているケースも含んで集計されたものです。
フロン排出抑制法の施工により、全ての業務用エアコンの簡易点検が義務化され、点検や冷媒量の管理が必要になったこと、また漏洩の少ない最新機器への更新が進み、漏洩率の調査が行われていた当時と今とでは、漏洩率にずれが生じている可能性があります。
この漏洩率を使用して漏洩量を予測した場合、実際よりも漏洩量が多くなる可能性があることをご了承ください。
※環境省と経済産業省で見直しの検討が行われているようです。
大目のフロン漏洩量になる可能性はありますが、フロン漏洩量を予測することで、点検、管理をしっかり行うための、機会につなげていただければと考えます。
弊社三郷オフィスのフロン漏洩量を推定してみました
弊社の三郷オフィスでは4方向の業務用空調機4台を使用しており、室外機は3台で、冷媒の初期充填量はそれぞれ2.25㎏、2.25㎏、3.7㎏で、合わせて8.3㎏となります。(設置時の配管延長による追加充填はない)
フロン漏洩量の予測は、この8.3㎏に漏洩率0.035(3.5%)をかけて、R410Aの地球温暖化係数2090をかけ、トンに換算すると漏洩量が計算できます。
8.3×0.035×2090÷1000=0.6t-CO₂ つまり0.6t-CO₂/年の漏洩量となります。
【漏洩量㎏】×【漏洩率(エアコンのタイプにより異なる)】×【地球温暖化係数(冷媒の種類により異なる)】÷1000=【CO₂換算漏洩量(t-CO₂)】
フロン漏洩1000t-CO₂ってエアコン何台くらい?
ビル用パッケージエアコンだと3.5%の漏洩率なので、R410Aの地球温暖化係数を使った場合、
478kg÷3.5%=13,657kg
つまり、管理している空調機に入っている冷媒の総量がR410Aで13,657kg以上の管理者は報告の義務があると推定されます。
では13,657kgの冷媒って、空調機で言うとだいたい何台分なのでしょうか?
一般財団法人 日本冷媒・環境保全機構の業界別漏洩量の目安によると、
総合スーパー(10,000㎡)の場合、店舗あたりの平均保有機器
- ビル用マルチエアコン:40kW(冷房能力)×20台
- ショーケース用のコンデンシングユニット(室外機):10kW(冷房能力)×10台
- 店舗あたりの算定漏えい量:約150t-CO2
- 食品、衣料品、日用雑貨を販売している店舗のため、食料品スーパーに比べて空調機の台数は多く保有している。
- 平均で6店舗以上を有する管理者が報告の対象と想定される。
ということでした。下記の出典に、他の施設(コンビニや商業ビル、飲食店、工場など)の参考事例が掲載されています。
管理している冷媒使用機器が、年間どの程度の漏洩をしている可能性があるのか、ご確認ください。
※出典:一般財団法人 日本冷媒・環境保全機構 業界別漏えい量の目安
最後に
どんな種類の、どれくらいの台数の業務用エアコンを管理していたら、国に報告が必要な1000t-CO₂を超えるのか、また、漏洩量を予測するための初期充填量の確認方法や計算方法について、ご紹介させていただきました。
「うちは大体、これくらい、年間フロン漏洩しているってことか」と大枠を把握していただき、定期的な簡易点検やフロン定期点検を実施し、漏洩の可能性があれば、修理依頼をして、業務用エアコンの故障リスクの回避と、気候変動の取り組みにつなげていただければ幸いです。
簡易点検やフロン定期点検について、弊社は昨年度、3000件以上の点検を行いました。お客様の機種ごとに初期充填量や追加充填量の管理も行っていますので、お気軽にお問合せください。