脱炭素経営や、カーボンニュートラル、サスティナビリティに向けた企業の取り組みが広がる中、二酸化炭素の温室効果の数十倍から一万倍以上の温室効果がある、業務用エアコンの冷媒(代替フロン)についても、削減の重要性が高まっています。
業務用エアコンのフロン漏洩は、脱炭素経営に必須要素となりつつあるSCOPE1に影響するのでしょうか。
簡単に解説します。
CDPはフロン漏洩量は基本的にSCOPE1に含むとしている
※出典:CDP 公式ウェブサイト
近年、脱炭素経営の広がりの中で、TCFDやCDP、SBT等に取り組む企業が増加し、企業の排出する温室効果ガスの排出量を算定する動きが増えてきました。
これらの気候関連イニシアティブやNGOは【GHGプロトコル】という算定基準に従っています。GHGプロトコルの、算定、報告、情報開示の必要がある温室効果ガス(GHG Green house Gas)は、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、つまり代替フロンを含んでいます。
出典:温室効果ガス(GHG)プロトコル
CDPの資料では、この『GHGボンベ使用時の放出』はSCOPE1の対象としています。
※出典:CDP 公式ウェブサイト
業務用エアコンを所有、管理している方は、点検や修理などで冷媒漏洩があり1000トン-CO₂以上となった場合、国に報告する必要があります。
フロン漏洩が1000-CO₂を超えた場合、【特定漏洩事業者】として社名とフロン漏洩量が公開されます。
TCFDやCDP、SBTに取り組む企業の場合、SCOPE1の排出量を公表することになっています。フロンの漏洩がある場合は、その公表されているSCOPE1のデータにフロン漏洩量も含まれてくることになります。
SBTでは第3社認証まで求めていないため、SCOPE1にフロン漏洩を含めなくても、何かペナルティがある、というものではありません。
ただ、CDPの回答を行っている場合は、第3社認証についての質問項目があるので、第3社認証をしている場合は、フロンの漏洩についてもSCOPE1に含める必要性が発生すると考えられます。
国に報告が必要なフロン漏洩量1000t-CO₂に達していなくても、漏洩の事実を把握している場合は、SCOPE1に含めるのが、気候変動の取り組みの信用性や透明性を証明するうえで、重要と言えそうです。
国内ではフロン排出抑制法で報告している場合に、SCOPE1に含むとしている
環境省、経済産業省が共同で作成している【グリーンバリューチェンプラットフォーム】に掲載されている「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン (ver.2.4)」のⅡ-1では『フロン排出抑制法で報告している漏洩量が算定対象』としています。
※温対法でも、GHGプロトコルと同様の温室効果ガスの排出量が、全ての事業所の排出量合計がCO₂換算で3,000t以上の場合は、国に報告が必要となります。
出典:サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン (ver.2.4)
最後に
フロンの漏洩量をSCOPE1に含める必要があるか、ないか、については、フロン排出抑制法で国に報告している場合は含めたほうがよさそうです。ただ、国に報告していない場合でもフロンの漏洩量を把握し、SCOPE1に含める場合、どの程度の影響があるのか、を把握していて損はありません。
SCOPE1は、減らせる余地がある方が、アピール効果が高いので、代替フロンからノンフロン冷媒に切り替える計画があれば、SCOPE1に含めておいた方が、SCOPE1の削減の余地は増えそうです。
いづれにしても、一番大切なことは、フロン漏洩を抑えることです。そのために重要なのは、簡易点検やフロン定期点検を実施し、漏洩量を把握することです。
簡易点検やフロン定期点検については、弊社も年間3000件以上の実績があり、フロン充填の記録も管理しているので、お気軽にご相談ください。