2021年3月2日、「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。どこが改正され、その改正にどんな意味があるのでしょうか。簡単に紹介します。
目次
3つの大きな変化!
今回の温対法の改正で、大きく変わったことは、下記の3つの内容が追加されたことです。
◆地球温暖化対策推進法の一部を改正する法律案
「2050年までの脱炭素社会の実現」が法律に明記されました!
2050年までの脱炭素社会の実現が法律に明記されたことは、政権が変わったとしても、脱炭素化の方向性は維持されることを意味します。
脱炭素社会にするには、時間がかかります。インフラや技術を革新する必要があり、その普及に伴った法律や制度も変えていく必要があります。2050年まであと29年ですが、様々な面で長期的な計画が必要です。毎回の選挙で投票数を獲得するために、方針が変わるようでは到底達成することはできません。
各自治体や企業は、国の大きな方針が法律で定まったことで、安心して投資や事業計画を立てることができます。そうした意味で、2050年脱炭素社会の実現が法律に明記された意味は大きいといえます。
◆地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案新旧対照表
地方自治体に施策目標を追加!
都道府県、中核市以上の市も、自然的社会的に応じた区域内の排出抑制等の施策の計画策定義務に施策目標が追加されました。
また、脱炭素化を推進するための計画、認定制度の創設を務めることとし、市町村から認定を受けた地域脱炭素化促進事業計画に記載された事業は、関係法令の手続きワンストップ化の特例が受けられるようになります。
これまで脱炭素化を迫られていたのは主に大手企業でしたが、国だけでなく地方自治体も同じ目標を持つことで、円滑な合意形成へとつながり、地域課題の解決も期待できそうです。
地方自治体の脱炭素化については、再エネが足りない、といった話題をよく耳にしますが、環境省の試算では、日本の再エネポテンシャルは現状使われているすべての電力需要に対し、最大2倍の再エネポテンシャルがあるとしています。
◆環境省 令和3年3月3日 地球温暖化対策推進法の一部改正法案及び再エネポテンシャル調査について
石炭火力や天然ガス、原子力がなくても、十分再エネだけで、電力を賄える可能性があります。
企業の温室効果ガス排出量を手続きなしでスピーディーに公開
企業(特定排出者)の温室効果ガス排出量について、電子システムによる報告を原則とすることで、スピーディーに公開できるようになり、どんな企業がどのくらい温室効果ガスを排出しているか、開示請求の手続きなしで確認ができるようになります。
◆特定排出者とは
※経産省 よくあるご質問 より
- 温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号))で温室効果ガスの排出量の報告を義務づけられている特定排出者には誰が該当するのですか。
エネルギー起源CO2(燃料の燃焼、他者から供給された電気又は熱の使用に伴い排出されるCO2)については、省エネルギー法の第一種エネルギー管理指定工場及び第二種エネルギー管理指定工場の設置者、省エネルギー法の特定貨物輸送事業者、特定荷主、特定旅客輸送事業者及び特定航空輸送事業者が該当します。
なお、平成22年度報告分(対象 : 平成21年度)からは、工場・事業場については、省エネルギー法の規制単位が工場単位から事業者単位に変わることから、全ての事業所の原油換算エネルギー使用量合計が1,500kl/年以上となる事業者(特定事業者、特定連鎖化事業者)が対象となり、温対法の報告も事業所単位から事業者単位に変わります。
一方、それ以外の温室効果ガス(非エネルギー起源CO2、メタン、一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボン類、パーフルオロカーボン類、六フッ化硫黄)については、事業者全体で常時使用する従業員の数が21人以上である事業者であって、かつ事業所ごとの温室効果ガスの種類ごとの排出量が二酸化炭素換算で3,000トン以上の場合が該当し、報告も事業所単位でしたが、平成22年度報告分(対象 : 平成21年度)からは、3,000トン以上の扱いが事業所ごとではなく、温室効果ガスごとに全ての事業所の排出量合計が3,000トン以上となる事業者、という扱いに変わるため、報告も事業者単位に変わります。
報告のしかたの詳細については、環境省・経済産業省のサイト [温室効果ガス排出量 算出・公表・報告制度について](http://ghg-santeikohyo.env.go.jp/)をご参照ください。
各種法律も脱炭素化に向け、修正!
今回の法改正に伴い、森林法、河川法、農地法、自然公園法、廃棄物処理法、環境影響評価法、省エネ法など、関連する法規制に修正が加わりました。
◆地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案新旧対照表
最後に
温対法の改正で、2050年の脱炭素化が法律に明記され、地方自治体の削減目標が設定され、自治体単位で再エネ100%や脱炭素化が進めば、おのずと石炭火力や原子力に頼らない社会になっていきます。
持続可能なエネルギーを循環させ、資源や資金も国内で循環できれば、これまで輸入という形で海外に流出していた富を国民に還元し、国内でエネルギーに関するリスク管理も可能となり、地方創生にもつながり、格差解消にもつながる。温対法を、そんな未来の第一歩のきっかけにしていきたいものです。
◆参考:環境省 地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案の閣議決定について