【中小企業も?!どうして脱炭素経営が必要なの?】の記事で、中小企業も、脱炭素経営が不可欠であることをお伝えしました。では、中小企業はどのように脱炭素に取り組めばよいのでしょうか。
気候変動の取り組みは各業界、各方面で進み、イニシアティブやネットワークも多々出てきています。どの組織とどの情報を押さえておけばいいのか、それらを探すだけでも一苦労です。
この記事では、用途ごとに、主な組織やイニシアティブ、ネットワークや、脱炭素経営を始めるうえで役立つ情報を整理しました。
目次
無料で情報を入手できるメルマガ!
気候危機や脱炭素に関わる取り組みや情報は、各業界で急速に進み、それに伴って、新聞や雑誌、ネット検索で紹介される機会がどんどん増え、日々埋もれています。何か検索しても、沢山ありすぎて、よりわからなくなることもあります。
新聞や専門誌で確認する方法もありますが、費用がかかります。費用をかけられない方や、そこまで関心が高くない方にお勧めなのが、脱炭素関連や、気候危機関連情報を無料で収集できるメルマガです。
<お勧めのポイント>
- 脱炭素関連の最新の動きや活動について、詳しい情報がわかる!
- 無料セミナーや勉強会など、イベント情報が盛りだくさん!
- 前線で活躍する人たちの考えや今後の動向がわかる!
気候危機の問題は、いくつもの問題が複雑に絡み合っており、それらの解決についても様々な議論や考え方が存在します。そのため、あらゆる視点の情報を集めて、理解を深めたうえで、企業の脱炭素経営方針を決めることが重要です。
新聞やネットの表面上のニュースだけでなく、前線で脱炭素社会をけん引する組織のメルマガを確認することで、一歩先の対策につなげていきましょう。
組織・ネットワーク名 | 範囲 | 主な目的 |
自然エネルギー財団 | 国内 | 自然エネルギーを基盤とする社会の構築 |
気候ネットワーク | 国内 | 脱炭素、持続可能な社会の構築 |
IGES 公益財団法人 地球環境戦略研究機関 | 海外 | アジア太平洋地域の持続可能な開発の実現、SDGsの達成 |
SBT | 海外 | パリ協定の求める温室効果ガス削減基準に整合する削減目標の設定を企業に求める |
気候変動イニシアティブ(JCI) | 国内 | パリ協定が求める脱炭素社会の実現 |
Sustainable Japan サステナビリティ・ ESG投資ニュースサイト | サステナビリティ経営、ESG投資に関するニュースサイト |
※SBTのメルマガは、リンク先のページの一番下の”Sign up for our newsletter”と書かれた場所にメールアドレスを登録することで所得できます。
※自然エネルギー財団は、原子力や火力+CCU(二酸化炭素回収・貯留技術)がなくても、自然エネルギーだけで十分日本の電力を賄える科学的知見を発信しています。メルマガの転送や転載も可能な場合が多く、利用しやすい情報源となっています。
無料で参加できる!脱炭素を目指す企業の勉強会ネットワーク!
脱炭素経営、つまり、2050年までに温室効果ガスを0にする経営を、無料で力強くサポートしてくれるのが、環境省主催の【脱炭素経営促進ネットワーク】です。
このネットワークは、SBT認定を目指す、という軸で、各企業の脱炭素経営を支援しています。SBTを実際に取得しなくても、同一水準の削減目標の設定を検討している企業や、そうした目標に向けて削減に取り組む企業も参加することができます。
※SBTは地球の平均気温を1.5未満に抑えるために必要な、科学的根拠に基づいた温室効果ガス削減目標を設定する取り組みです。
ネットワークに参加すると、どうなるの?
◆環境省/経産省のグリーンバリューチェーンプラットフォームに会社のロゴが公開されます。
→ 脱炭素経営の意思表示ができ、社外にアピールできます。
◆年に3回の勉強会に参加できます。
→ 最新動向の報告や、先進的な取り組みをする企業の事例紹介、またグループディスカッションによる情報共有ができます。
各企業で取り組む担当者は、孤独な闘いをしていることも多く、勉強会で他社とのつながりができると、励みやヒントにつながります。
他、役立つ環境省/経産省の脱炭素経営サイト【グリーン・バリューチェーン・プラットフォーム】を一通りご覧いただくことをお勧めいたします。
目的別!おさえておきたい組織と参加条件!
脱炭素経営でメインとなる取り組みは、【電気を再エネ100%にする】【車をEVなどの温室効果ガス0の機種にする】【脱プラスチック】などです。そのほかの取り組みも含め、それらの目的ごとに、おさえておきたい組織やイニシアティブを、参加条件やタスクも含めてご紹介します。
再エネ100%に取り組むなら
再エネ100%を目指す企業や組織の代表的なネットワークはRE100とRE Actionです。
RE100とRE Actionは、どちらも遅くとも2050年までに再エネ100%達成を条件としています。
組織・ネットワーク名 | 範囲 | 参加条件・費用 |
RE100 | 海外 | 【条件】 電気使用量100GWh以上(日本企業は50GWh以上)等 2030年60%、2040年90%の中間目標(日本は推奨、他国は必須) 【費用】 2021以降の加盟 5000USD/年 2021より前の加盟 3500USD/年 【タスク】 年次報告の提出 |
再エネ100宣言 RE Action | 国内 | 【条件】 RE100の対象ではないこと(電力消費量が50GWh未満)等 【費用】 25000円〜200000円(会社規模による) 【タスク】 年次報告の提出 |
※国内のRE100取得を支援しているのがJCLPです。
組織名 | 主な目的 | 参加条件・費用 |
JCLP | RE100加盟サポート 脱炭素社会への移行 1.5°C目標の達成 | 【条件】 1.JCLPの目的に賛同すること 2.法人、地方公共団体、法人格を持たない団体であること 3.JCLPの活動に賛同・支援し、対外的に表明すること 等 【費用】 正会員 120万円/年 賛助会員 10~20万円/年 |
EVに取り組むなら
組織・ネットワーク名 | 範囲 | 主な目的 | 参加条件・費用 |
EV100 | 海外 | 電気自動車100% | 【条件】 2030年までに下記を達成 ・直接管理車両のEV化 ・サービス契約において、EV利用を要求 ・従業員・顧客のEV利用支援 【費用】 2021年以降の加盟 5000USD/年 2021年より前の加盟 3500USD/年 |
電動車活用推進コンソーシアム | 国内 | 電動業務用車両の普及 | 【参加規模】 158団体 |
EV100に参加する日本企業は5社となっています。企業としてEVを導入しようにも、社用車EVの車種がほとんどないことや規格が統一されていない事などが課題となっています。
ただ、EU各国で2030年までにガソリン車販売禁止が始まり、日本政府も2030年前半までにガソリン車の販売禁止を発表しました。
今後EV100や電動車活用推進コンソーシアムに参加する企業は増えることが予想されます。
脱プラスチックに取り組むなら
組織・ネットワーク名 | 範囲 | 内容 |
New Plastics Economy | 海外 | 【目的】 プラスチックがゴミとして排出されない経済の構築 【必要とされる行動】 ・不必要なプラスチック製品を排除すること ・必要なプラスチックが再利用、リサイクル、堆肥化可能であること ・使用するプラスチック製品を循環させ、環境には排出しないこと 【レポート】 2016年と2017年にプラスチック社会の現状や、リサイクル状況などをまとめたレポートを発表 このレポートは世界的な基準となっています。 |
環境省 プラスチックスマート | 国内 | 【内容】 プラスチックゴミの削減の取り組みを募り、内容をウェブサイトで紹介 【応募方法】 応募サイトから応募フォーマットをダウンロードして事務局に送信すれば、掲載されます。 |
プラスチックについては、小泉環境大臣が、レジ袋に続き、スプーンやフォークの有料化の検討を始めました。この流れは、ストローやプラスチックコップ、その他のプラスチック製品に広がっていくのではないでしょうか。
※植物由来のバイオプラスチックが注目されますが、原料のトウモロコシは主にブラジル輸入で、熱帯雨林の伐採につながる可能性があります。
※バイオプラスチックは基本的に自然界で分解されないため、海洋プラスチック汚染問題の解決策にはなりません。生分解性プラスチックとは別物です。
ゴミを出さない詰め替えサービス「Loop」も誕生しています。
プラスチックがない日常は、現時点では全くイメージできないかもしれません。
ただ、こうした新しいビジネススタイルが、今後様々な製品に広がり、「試してみよう!」という動きが出れば、いつの間にか、脱プラスチック社会、サーキュラーエコノミー(循環型経済)、そして持続可能な社会につなげていけるのではないでしょうか。
その他の気になる組織
組織・ネットワーク名 | 範囲 | 内容 |
水素バリューチェーン推進協議会 | 国内 | 【発足】 2020年12月17日 水素社会の構築や拡大に取り組む民間企業9社によって設立 【目的】 水素社会実現のための設備投資や普及 【必要とされる行動】 ・社会実装プロジェクトの提案・調整 ・ファンドの創設、基本的な管理・運営の検討 ・需要創出、規制緩和などの政策提言 等 |
チャレンジ・ゼロ | 国内 | 【発足】 2020年6月8日 経団連が日本政府と連携しネットワークを発足 【内容】 パリ協定の基準のもと、脱炭素社会の実現に向けた企業や団体のイノベーションを後押しし、同業種・異業種・産学官の連携を図る 【参加規模】 2021年3月10日現在、180の企業及び団体が参加 |
水素バリューチェーン推進協議会
2020年12月17日、水素社会実現のため、設備投資や普及を目指し、水素バリューチェーン推進協議会が発足しました。
この協議会は、水素社会の構築や拡大に取り組む民間企業9社によって設立されました。
設立の背景には、近年、世界各国で水素社会実現に向けた動きが加速していることがあります。
欧州では2020年に水素エネルギー戦略が公表され、ドイツでも同年に国家水素エネルギー戦略が決定しました。また、日本でも、2017年に水素基本戦略が策定されています。
この組織の目的は、”サプライチェーン全体を俯瞰し、業界横断的かつオープンな組織として、社会実装プロジェクトの実現を通じ、早期に水素社会を構築すること”です。
引用:水素バリューチェーン推進協議会(JH2A)について
チャレンジ・ゼロ
2020年6月8日、経団連で組織された「チャレンジ・ゼロ」というネットワークも発足しました。
「チャレンジ・ゼロ」は、経団連が日本政府と連携し、パリ協定の基準のもと、脱炭素社会の実現に向けた企業や団体のイノベーションを後押しするイニシアティブです。
チャレンジ・ゼロに参加する企業は、「「チャレンジ・ゼロ」宣言」に賛同し、それぞれが挑戦しているイノベーションの具体的な取り組みを公表しています。
これらの企業のイノベーションの事例は、「チャレンジ・ゼロ」のウェブサイトに公開されています。
参考:チャレンジ・ゼロ HP
最後に
今回の記事では紹介していない組織やネットワークも多々あり、これからも出てくると予想されます。ただ、今回ご紹介させていただいた組織やネットワークをチェックすることに、損はないと考えています。
より多くの企業や組織が効率的に情報を収集し、実際の具体的な脱炭素経営に集中して取り組めるよう、参考になれば幸いです。