気候変動訴訟とは、気候変動による異常気象や災害等で生命や財産を脅かされたとして、二酸化炭素排出元の企業や行政に対し訴訟を提起することです。
●気候変動訴訟29カ国以上で確認 NGOが政府を提訴するケースが増加
7月4日にロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のグランサム研究所から気候変動訴訟に関する報告書が発表された。報告書によると、気候変動訴訟は29カ国以上で確認されており、合計1,328件が確認されている。
また、1990年以降、アメリカにおいて多く確認され、ここ最近はインドネシア、パキスタンなどの国々でも起こっている。
原告になっているのは、市民、NGO、企業、地方政府等で、気候変動による災害や健康被害等を訴えている。訴訟結果として米国では原告敗訴の傾向が見られるが、米国以外では、1994年から2016年に提訴された案件のうち、43%が原告勝訴、27%が原告敗訴で原告側が支持される数の方が多いことが分かった。
なお現在、日本では、仙台(1件)、神戸(2件)、横須賀(1件)で石炭火力発電所の建設・稼働を問う気候変動訴訟が提起されており、4つの裁判が進んでいる。
引用:気候ネットワーク メルマガより許可を得て引用
気候変動による災害が世界中で増える中、適切な対策を取らない企業や団体は、訴訟を起こされる可能性が、今後ますます高まると予想されます。原告となるのは、海外で住居や財産を災害で奪われた方々や国家であったり、未来を奪われたくない身近な子供たちかもしれません。
遠い場所の被害は関係ない、知らない人の被害は関係ない、自分たちが何かする必要はない、とは言えなくなってきています。
気候正義 climate justice って何?
気候訴訟が起きる根本的な考え方として、climate justice,気候正義という考え方が広がってきています。気候正義の柱は3つあります。
同世代間の平等
気候変動の原因を作り出しているのは、世界の富裕層です。この富裕層10%が、世界の温室効果ガスの約50%を排出しています。本来であれば気候変動による災害等で不利益を被るべきなのは、原因を作り出してきた富裕層であるべきです。自分の部屋を汚したら、自分で片づけることは当たり前のことです。
しかし、実際は、気候変動による災害等の被害を最も受けるのは、貧困層です。この状態は明らかに不公平といえます。富裕層はこの不公平を是正するために必要な行動をしなければいけない、という考え方が同世代間の平等です。
異世代間の平等
気候変動の影響による被害は、本来、原因を作り出してきた先祖や大人世代が受けるべきです。しかし、実際に被害を受けるのは、私たちの子供たち、そして孫以降の世代です。この状態も明らかに不公平といえます。大人世代は最大限の努力をして、この不公平を是正するために必要な行動をしなければいけない、という考え方が異世代間の平等です。
人間以外が持つ平等の権利
気候変動の影響による被害は、人間だけでなく、地球に生息する他のすべての生物に対しても被害をもたらします。いうまでもなく、これらの生物が引き起こした問題ではないにもかかわらずです。これも明らかに不公平といえます。
■参考:
1600年~1900年には1年で0.25種だった生物種の絶滅速度は、1975年以降、1年に40,000種と急激に上昇し続けている。
引用:国立環境研究所 http://tenbou.nies.go.jp/learning/note/theme2_1.html
最後に
私たちは日本人です。日本人は富裕層に含まれます。つまり、気候変動を引き起こす被告側、加害者です。しかし、私たちが普段の生活をするうえで、被告側、加害者としての意識は、現状【ない】のではないかと感じます。
もちろん【ある】人も沢山いらっしゃいます。そうした人々が日々様々な活動、行動を通して、伝わる情報もあれば、変わる体制もあります。
ただ、気候変動が深刻化する速度に、それらの変化は追い付いていません。日本という国や、日本国民が訴訟を起こされる前に、気候正義(climate justice)の概念を広め、自分たちは加害者である意識を持ち、行動に変えていく必要性があると考えます。