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どこまでが再エネ?日本と世界の再エネの定義について徹底解説!

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再生可能エネルギー?

皆さんは「再生可能エネルギー」という言葉を聞くと、どのような発電方法を思いつくでしょうか。

太陽光発電や風力発電などの王道の発電方法はもちろん、海洋エネルギー発電や水素を用いた発電など、さまざまな発電方法が思いつくのではないでしょうか。

その中で、厳密に「再生可能エネルギー」と呼べるものは、どのくらいあるのでしょうか。そもそも、「再生可能エネルギー」とはどのように定義されているのでしょうか。

具体的に何が「再生可能エネルギー」なのか、今まで考えたことのある人は意外に少ないかもしれません。

今回の記事では、日本および世界で何が「再生可能エネルギー」として認められているのか、その定義や分類の違いについて説明いたします。

再生可能エネルギーの定義って、法律ごとに違うの?

1.「エネルギー供給構造高度化法」

まず、日本における「再生可能エネルギー」の定義ですが、これは2009年に制定された「エネルギー供給構造高度化法」において、

「太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの」

と定義されています。

また、具体的な種類として、以下の7つのものが指定されています。
(1) 太陽光
(2) 風力
(3) 水力
(4) 地熱
(5) 太陽熱
(6) 大気中の熱その他の自然界に存在する熱
(7) バイオマス(動植物に由来する有機物)

この定義によると、先述の海洋エネルギーや水素によるエネルギーは日本が定める「再生可能エネルギー」に分類されないことがわかります。

2.「FIT・FIP制度」

一方で、再生可能エネルギーから作られた電気を電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを保証する制度であるFIT・FIP制度においては、以下の5つが再生可能エネルギーとして定められています。

(1) 太陽光
(2) 風力
(3) 水力
(4) 地熱
(5) バイオマス

1.の分類と比較すると、「太陽熱発電」および「大気中の熱その他の自然界に存在する熱」が該当していないことがわかります。

※FIT・FIP制度については、以下の記事でより詳しく解説しています。
再エネ主力化へ~「FIP」と「高度化法」とは?

このように、一口に「再生可能エネルギー」といっても、それが実際に指す発電方法は時と場合によることに注意が必要です

国際的にも異なる再生可能エネルギーの定義・分類!

1.RE100

RE100は事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギー(Renewable Energy、略してRE)にすることを目標とする国際的なイニシアチブです。

再生可能エネルギーに関して世界的な影響力を持つRE100ですが、RE100が認める再生可能エネルギーの種類は5種類あります。

(1) 風力
(2) 太陽光
(3) 地熱
(4) 持続的に調達できるバイオマス(バイオガス含む)
(5) 持続可能な水力

RE100の認める再生可能エネルギーの大きな特徴は、バイオマス発電と水力発電が持続性のあるものに限定されている、ということです。

バイオマス発電や水力発電が持続的な方法で発電されているかどうかの区別は、第三者機関の認証が推奨されており、以下の機関がその認証に携わっています。

  • ISO(国際標準化機構:International Organization for Standardization)
  • Green-e Renewable Energy Standard
  • Low Impact Hydropower Institute
  • Hydropower Sustainability Council

また、再生可能エネルギーとして水素は含まれないものの、上記の再生可能エネルギーから製造した水素(グリーン水素)は認められています。

2.SBT

SBT(Science Based Targets)とは、企業における科学的に整合した温室効果ガス削減目標の設定を促進させる世界的な取り組みです。

SBTの取り組みにおいては、温室効果ガス排出量の算定や報告が必要となりますが、その際に再エネ電力の調達によるCO2削減効果が考慮されます。

SBTにおける再生可能エネルギーは、基本的にはRE100の再エネの基準に準拠しています。
これは、SBTの事務所がCDPという機関で、RE100と同じであるからです。

ただし、厳密にはRE100の方が再生可能エネルギーの基準が少し厳しいです。

例えば、SBTでは認められている再エネ熱由来のJクレジットがRE100では使用できません。

J-クレジット

参照:「J-クレジット制度 SBT・RE100での活用」

また、RE100においてはトラッキング(電源を特定できること)が可能であることが求められているため、トラッキングのない非化石証書は適用されません。

RE100とSBTの証書利用

参照:「RE100・SBTの義務履行に対応した再エネ調達方法について」

3.その他の国際機関

RE100やSBT以外にも、それぞれの国際機関が独自に再生可能エネルギーを定義しており、それらは概ね一致するものの、一部差異も見られます。

  • IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)
    「太陽・地球物理学的・生物学的な源に由来し、自然界によって利用する以上の速度で補充されるエネルギー全般」と定義している。
  • 国際エネルギー機関
    「絶えず補充される自然の過程に由来し、様々な形態のうち太陽から直接供給される光や地球内部で発生する熱、太陽や風や海洋や水力やバイオマスや地熱資源から発生した熱や電力、そして再生可能資源に由来するバイオ燃料と水素」と定義している。ヒートポンプによる熱(地中熱、大気熱等)は別記している。
  • 欧州連合
    廃熱利用、水熱利用、空気熱利用を定義に含む。ヒートポンプについては条件付きで含む。木質バイオマスは除外されている。

これらの機関では、再生可能エネルギーにヒートポンプやバイオマスを含むか否かが主な争点になっています。

「自然エネルギー」「クリーンエネルギー」等って再生可能エネルギーと違うの?

再生可能エネルギーと似た用語

ここまで、再生可能エネルギーの定義について説明してきましたが、再生可能エネルギーと混同しやすい用語もたくさん存在します。

例えば、新エネルギー、自然エネルギー、代替エネルギー、クリーンエネルギー等は、皆さんも一度は聞いたことのある用語なのではないでしょうか。

これらの用語は、再生可能エネルギーとどのように違うのでしょうか。それぞれについて解説いたします。

新エネルギー

新エネルギーとは、新エネルギー法(正式名称「新エネルギーの利用等の促進に関する特別措置法」)によって定義された用語で、日本のみで用いられている概念です。

その定義は、「技術的に実用段階に達しつつあるが、経済性の面での制約から普及が十分でないもので、非化石エネルギーの導入を図るために特に必要なもの」とされています。

具体的には、太陽光発電、風力発電、太陽熱利用、温度差エネルギー、廃棄物発電、廃棄物熱利用、バイオマス発電、バイオマス熱利用、雪氷熱利用など、かなり多くの発電方法が該当します。

また、水力発電は小規模なもののみが含まれます。これは、大規模な出力の水力発電は経済性が成立する発電技術であることから新エネルギーの対象とはならないからです。

新エネルギーの最大の特徴は、経済性に課題のある発電方法であることです。

自然エネルギー

自然エネルギーの定義は、「太陽光や熱、風力、潮力、地熱など自然現象から得られるエネルギー」です。

自然エネルギーは、一般的には再生可能エネルギーと同義として使われることが多いです。

しかし、厳密には「自然現象から得られるエネルギー」であるため、生可能エネルギーに含まれることの多いバイオマス発電を含まないです。

自然エネルギーと再生可能エネルギーが明確に区別して使われている場合、バイオマス発電の有無が関係しているかもしれません。

代替エネルギー

代替エネルギーは様々な使い方がありますが、日本では「石油代替エネルギー」を指すことが多いようです。

これは、石油を除くすべてのエネルギー、すなわち石炭ガス化・天然ガス・原子力等の枯渇性エネルギーを含みます

一方で、代替エネルギーを英語で表現するとalternative energyですが、この言葉は「地球の天然資源を使わない形で、かつ環境に悪影響を及ぼさない形で、太陽、風力、水力等を用いて生産された電力やエネルギー」(Oxford Dictionaryより)を指します。

この定義は生態系破壊につながるバイオマスや水力をも除くものになっており最上級に環境に配慮したエネルギー源に限る、といったニュアンスが読み取れます。

そのため、日本で言う「代替エネルギー」と、それを英訳した「alternative energy」では全く違う意味合いがあることに注意が必要です

クリーンエネルギー

クリーンエネルギーの定義は、「大気汚染・地球温暖化の原因となる物質を排出しない、あるいは排出が少ないエネルギー」です。

この定義から原子力発電は対象になるように思われますが、放射性廃棄物など様々な問題があることから分類されていません。

そのため、クリーンエネルギーも再生可能エネルギーと大きな差異はないと考えられます。

まとめ

私たちがよく聞く「再生可能エネルギー」、「新エネルギー」、「代替エネルギー」などの用語ですが、これらの用語を聞き分けている方は少ないのではないでしょうか。

結論としては、これらの用語は同義として使われていることがほとんどだと思っておいて良いと思います。

ただし、特に海外では、それらの用語を区別して使っていることもあると考えられるため、意図して使い分けられている場合はその意味の違いを意識しながら聞き分けるようにすると良いかもしれません。

新エネルギー非化石エネルギーによる発電方法の中でも、現状で経済性に課題があるもの。日本独自の用語。
自然エネルギー自然現象から得られるエネルギー。再生可能エネルギーとほぼ同義だが、バイオマスは含まない。
代替エネルギー主に「石油代替エネルギー」の意味で使われ、石油以外の枯渇性エネルギーを含む。英語のalternative energyは全く別の意味を持つ。
クリーンエネルギー再生可能エネルギーとほぼ同義。

最後に

再生可能エネルギー?

「再生可能エネルギー」は近年非常によく聞くようになった言葉ですが、その細かな定義を意識している方は少ないと思います。

実際、「再生可能エネルギー」と一口に言っても、国や団体によって指すものが微妙に異なるのは事実です。

「再生可能エネルギー」やそれと似たような用語が使われている場合、その詳細な定義に注意を払う必要がありそうです。

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