フロン排出抑制法で業務用空調機に義務付けられている簡易点検や、圧縮機定格出力7.5kw以上に必要なフロン定期点検を実施した後、フロン漏洩の可能性や漏洩が発覚した場合、どうすればよいのでしょうか。簡単にご紹介します。
目次
フロン漏洩かも!?どうする?
フロン漏洩の可能性に気づくきっかけは3つあります。
簡易点検時
1つ目は3か月に1度の簡易点検の際に、点検した業者もしくは管理者が、業務用空調機の熱交換器部分に油のにじみや傷があることに気づくパターンです。
熱交換器部分に油のにじみや傷があると、フロンが漏洩している可能性があります。ただ、油にじみがあってもガス漏れ確定ではありません。過去の保守点検、修理、工事などで付いた油にじみだったり、それ以外の何かが付いただけだったりする事もあります。
まずは、フロン漏洩か、そうではないかの確認が必要なので、専門業者にご相談ください。運転状態から、冷媒が減っている可能性があるか?油にじみ部分でガス漏れがあるか?ガス漏れ検知器や検知液で調査を実施し、確認します。
定期点検時
圧縮機の定格出力7.5kw以上に義務付けられているフロン定期点検の結果、漏洩の可能性が発覚したら、簡易点検と同様、専門業者による確認が必要です。フロン定期点検は有資格者の業者が実施するので、そのまま修理依頼をするのがスムーズです。
- 定期点検について詳しくはこちらをご覧ください。
『業務用エアコンに点検義務があるってご存知ですか?』
故障時(冷媒不足のエラー表示や、冷暖房の効きが悪くなった時)
冷暖房の効きが悪くなる原因の一つが冷媒不足です。空調機の運転能力に影響が出るほどになってしまうと、冷媒は5割程度漏洩してしまっている場合が多いです。
すぐに専門業者に修理の依頼をしてください。
フロン漏洩発覚!!どうすればいい?
フロンの漏洩が発覚したら、専門業者に修理を依頼してください。
修理の流れ
①まずは運転状態から、冷媒が減っている可能性や、油にじみ部分でガス漏れがあるか、ガス漏れ検知器や検知液で調査し、確認します。
②この時点で漏洩箇所が見つかった場合、修理をするために、業務用空調機の内部に封入されている冷媒を一度全て回収し、ガス溶接や部品交換などで修理を行います。
③修理後、無害な窒素ガスを封入し、他に漏れ箇所が無いかの目視確認や、機械に入れた窒素ガスが減少してこないかを確認します。
④ガス圧を確認して、他に漏れ箇所がなければ、窒素ガスを抜いて、機械の初期充填量と配管長分の追加充填量を封入します。
冷暖房機能の回復を確認して、修理を完了させます。
※業務用空調機のエラーなどで冷媒不足が明確になっている場合で、ガス漏れ検知器や検知液の調査では、ガス漏れ箇所が特定できない場合は、「気密検査」を実施します。
気密検査とは、業務用空調機や配管内の冷媒を一度全て回収してから、漏洩しても無害な窒素ガスを封入し、漏洩箇所を特定する作業です。
- 初期充填量については『フロン漏洩量【1000t-CO₂】って何台くらい?漏洩量を予測する計算方法!』をご欄ください。
- 気密検査についてはこちら『【エアコン工事解説!】ポンプダウン、気密検査、真空乾燥』もご覧ください。
修理時のお願い
設置時に冷媒を【追加充填】をしている場合は【追加充填量】を教えてください。
追加充填とは、設置する際の配管の長さに応じて、冷媒を追加して充填することです。
修理する時は、初期充填量、特に追加充填量が分かっていると、とても参考になります。
追加充填量は配管長などから計算するもの、配管長は設置時でないとわかりません。
修理で入っても、壁や天井内など、配管がどのように通っているかが分からないので、想定での配管長と運転状態から追加充填量を調整します。
設置時の追加充填量の情報が残っていると、修理にかかる時間が短縮されたり、冷媒を入れすぎることを防げる(費用抑制)ので、お客様にとってもメリットがあります。
設置時の追加充填量は、設置業者が空調機の室外機に記載してくれていることもあるのですが、記載がないこともあります。
記載がない場合は、設置時に設置業者からお客様に提出された報告書にしか、記録が残っていません。
修理をご依頼いただく場合は、設置時の追加充填量を教えていただけると、大変助かります。
ご協力いただけますよう、お願い致します。
点検後の注意点
法定点検後、点検業者からの報告で指摘が上がっているにも関わらず修理しない場合は、罰則の対象となるだけでなく、冷媒(フロン)が不足すると、エアコンの効きが悪くなるので、電気代の増加につながります。
また、圧縮機などの高額な部品の故障にもつながる可能性があります。
修理の時に、最初に回収できた冷媒の量と修理後に封入した冷媒の量の差が漏洩量になります。
※管理する全ての業務用空調機からの漏洩量が1000t-CO₂を超えてしまうと、国に報告が必要となります。
この漏洩量は、管理者が所有する業務用空調機すべてで把握、管理する必要があります。管理する際のツールとして、EEGSという電子報告システムがあるので、簡単にご紹介します。
フロン漏洩の管理や報告は原則として【EEGS】!電子報告システム
日本政府は、省エネ法や温対法、フロン法の温室効果ガス排出に関わる報告を統合的に管理できるように【EEGS】という電子報告システムを開始しました。
下記の資料には”「各制度の報告書の作成から提出までをこのシステムで完結することができます。令和4年度以降の省エネ法・温対法・フロン法に係る報告は、原則として、EEGSを御利用ください。”と記載があります。
フロン法の報告機能は既存のEEGSにはありませんが、来年度に追加される予定となっています。今後、EEGSで管理するのがよさそうです。
※EEGSにフロン法報告の機能が追加されるまではRaMS冷媒管理システムを活用して管理することも可能です。
最後に
簡易点検や定期点検を適切に実施し、フロン漏洩の疑いがある場合は、専門業者に調査を依頼し、フロン漏洩が発覚したら、修理の実施と、漏洩量の管理
弊社は昨年度、3000件以上の点検を実施致しました。お客様の機種ごとに初期充填量や追加充填量の管理も行っています。
ご相談や点検のご依頼、ご検討中の際は、お気軽にお問合せください。