2022年4月から、東京証券取引所はプライム市場に上場する1841社に対してTCFD等、気候関連情報開示が求められることになり、これを受けてCDPも、気候変動に関する質問状を送付する対象企業にプライム市場該当企業も加えることを発表しました。
TCFDの開示要求項目やCDPレポートの評価項目になっているSCOPE1,2,3の算定やSBT認定に取り組む企業が急増することが予想されます。
そんな中SBTでは、2021年12月に、基準年と目標値について、ルールを追加しました。「2021年以降を基準年にする場合は、2020年を基準とした削減率の設定を求める」という点です。
これはどういうことなのでしょうか。簡単に解説します。
どこがどう変わった?
SBTiの判断基準を整理したものとして、【Target Validation Protocol】というものがあります。これを満たせば基本的にSBT認証が得られる、というものです。このTarget Validation Protocolが2020年4月のV2から2021年12月にV3へ変更されました。
それを受けてSBTも、2022年7月15日から SBT Criteria Ver.5.0 へ変更されます。
その中で、基準年について、下記の記載がありました。(弊社和訳)
出典:TARGET VALIDATION PROTOCOL FOR NEAR-TERM TARGETS
つまり、2021年以降を基準年にする場合、2020年を基準として削減率を設定することが求められます。
他にも、以下の変更点などがあります。
- WB2度目標がなくなる
- 目標年の設定可能期間が5~15年先から「5~10年先」に短縮
基準年のポイント
基準年についてのポイントは
- 基本的に基準年はSBT目標の提出日から2年以内とされ、2021年に提出したものは直近年が2019年以降でなければならない。
- 新型コロナウイルスによる影響を大きく受けている場合は、2022年に提出する場合であっても例外的に2019年も認められている。
- 2022年に目標を提出する場合は、基本的に基準年は2019年、2020年、2021年(2022年)のいずれかとなります。
- 2021年以降を基準年にする場合、2020年を基準として削減率を設定することが求められる。
基準年を2021年、2025年にした場合どうなる?
SBTは5年から10年先の削減目標を設定する条件なので、仮に10年先の目標について、上記を踏まえ、2020年、2025年を基準年にした1.5度目標の場合(年率4.2%削減)、下記のような目標となります。
2020年を基準年とした場合:2030年に42%削減
2021年を基準年にした場合:2031年に46%削減(2020年から11年分)
2025年を基準年にする場合:2035年に63%削減(2020年から15年分)
1.5度の削減水準もかなり野心的ですが、2021年以降は基準年が遅くなるに従い、求められる削減率が高くなり、急激な変化(削減)が必要となります。
これが、パリ協定に整合した、地球の平均気温を1.5度に抑えるための目標水準となります。
※上記グラフはSCOPE1,2の合計排出量を100t-CO₂とした場合の基準年ごとの削減率を想定したグラフです。
最後に
今回、SBTの基準年と目標について、簡単に紹介させていただきました。具体的な数値を出すことで、より現実的なイメージができるようになり、今後どれだけ厳しい目標になっていくのかを再認識しました。
SBTに取り組むか否か、社内で議論や躊躇している余裕はないかもしれません。
SBTは業種別の新たなプロジェクトを次々に開発しています。そうなればより複雑で理解が難しくなることが予想されます。
今のうちに、早めに、取り組むことをお勧めいたします。