企業が科学に基づく温室効果ガス削減目標を設定するSBTに、2020年4月から【中小企業向けの新たな申請ルート(Target Setting Letter for SMEs)】が導入されました。
費用も1,000米ドル(¥110,628※2021/7/7時点)と、これまでのSBT認定費用4,950米ドル(¥547,562※2021/7/7時点)より、ハードルが下がったこともあり、弊社は、英語が得意ではありませんが、中小企業向けのSBT認定に挑戦することにしました。
目次
中小企業向けSBT申請必要なものは3つ
中小企業向けSBTの申請書類は https://sciencebasedtargets.org/resources/?p=resources の SME Target Setting Letterからダウンロードできます。
申請書は英文ですが、7ページと、通常のSBTコミットメントレター(43ページ)の6分の1で、説明文が2ページあるので、実際記載が必要なのは署名するページ含め5ページです。
回答項目は30項目で、そのうち、会社名や担当者、連絡先などの特に準備が不要な項目を除くと、排出削減に関する項目は10項目です。
Google翻訳を活用しながら読み解いていくと、複雑で難しい項目はほとんどないので、作成しやすく、だいぶハードルが下がっていると感じます。
申請に必要なポイントは大きく分けて下記の3つでした。
① SCOPE1,2のデータ
SCOPE1とは、事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(ガソリンや都市ガスなど、使った場所で温室効果ガスが発生するもの)です。
SCOPE2とは、他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出(電気など、使った場所と温室効果ガスが発生する場所が違うもの)です。
詳しくは【SBT目標 SCOPE1,2算定に挑戦!】何から始めればいいの?をご覧ください。
② SCOPE1,2の削減目標
中小企業向けSBT申請書には、目標の選択肢があらかじめ提示されており、その中から選ぶ仕様になっています。そのため、会社として目指すレベルを決めておく必要があります。
※2021年に提出する場合、提出するデータは、2019年以降のものでなければなりません。
③ SCOPE3を算定し削減する意思
申請書には「あなたの会社がスコープ 3 の排出量を測定して削減することを確認してください。 」という設問があります。細かな算定データや算定方法は確認されませんが、SCOPE3も算定することと、削減することが求められます。
SCOPE3の算定についてはこちらをご参照ください。
- 【SCOPE3 算定に挑戦!】カテゴリー1,2,3の計算方法!
- 【SCOPE3 算定に挑戦!】カテゴリー4 輸送、配送(上流)
- 【SCOPE3 算定に挑戦!】カテゴリー5 廃棄物
- 【SCOPE3 算定に挑戦!】カテゴリー6,7,11,12!
※削減目標達成のためにオフセットを使用することはできません。
※中小企業向けSBTの認定後は毎年、状況を報告する必要があります。
中小企業向けSBT目標設定レター2021.4を和訳
毎年更新される【中小企業向けSBT目標設定レター】の2021年4月版をGoogle翻訳をもとに、和訳しました。
ニュアンスに多少違いがあると思いますが、英語が得意ではない中で、中小企業向けSBT認定を目指す方々のお役に立てばと思い、下記にデータを置きます。
中小企業向けSBT申請から認定までの流れ
① 申請書をダウンロード
中小企業向けSBT申請書類 https://sciencebasedtargets.org/resources/?p=resources の 【 SME Target Setting Letter 】をダウンロード
② PDFをwordに変換
ダウンロードした書類はPDFのため、PDFからwordに変換(弊社は無料の変換サイトを活用)
③回答欄に入力
wordにした申請書の解答欄に必要事項を入力
(Google翻訳を活用し、英語で入力。下記和訳を参考にしてください。)
※社内承認で日本語版が必要な場合は、SBT SME 目標設定レター 2021.4(和訳)をword変換し、使ってください。
④完成したらPDFに変換
社内承認後、完成した書類をPDFに変換する
⑤メールに添付し送信
targets@sciencebasedtargets.org 宛にメールに添付し送信
※弊社は送付文もGoogle翻訳を活用し、シンプルに作成しました。
※すぐにSBTから自動返信メールが届きます。
SBTからのメール返信を待つ
内容についてのメール返信は、混み合い状況もあり、10日前後~2週間かかる場合があるようです。
※弊社の場合、目標設定レターを送ってから10日後に、無事審査が通り、弊社の目標が認められた内容のメールが届きました。
請求、支払い、報告
前回のメールから2週間弱後、請求書が添付されたメールが届きました。
弊社は海外送金の経験がなかったので、日ごろから付き合いのある銀行の担当者を通して、手続きをしました。
コロナの関係で銀行の窓口の予約がなかなか取れない状況もあり、1週間弱かかりました。
支払いを済ませ、控えをPDFにして、支払い証明として先方にメールで送信しました。
認定
SBT事務局にて支払いの確認が完了すると、メールが届きます。文中のcommunications welcome pack と記載された部分にリンクが設定されており、クリックすると、ロゴのダウンロードURLを含む5枚の資料が開きます。資料内容を確認し、ロゴのダウンロードを行いました。
※これまで連絡を取っていたチームとは異なり、認定後はコミュニケーションチームになるようで、資料の中に「連絡先を送ってください」と指示があり、連絡先を送りました。
SBTiウェブサイトへの会社名の掲載は、2021年8月23日に登録され、確認することができました。
※登録されていた会社名が提出した英文名のものと違っていたため、確認に時間がかかりました。もっと早く掲載されていた可能性があります。(修正依頼中)
※【ECO】で検索すると出てきます。
SBT認定されるとどうなるの?~メリットは?~
SBT公式サイトに会社名や目標が公開される
SBTの公式サイトでは、【行動を起こす企業】、つまり、SBT認定された企業が検索できます。SBT認定されると、SBT公式サイトに掲載されます。
◆掲載されている企業を検索する方法は下記の通りです。
①SBT公式サイトの【行動を起こす企業】をクリックし、【会社に会う】をクリックする
②検索小窓に検索したい企業を入力
出典:https://sciencebasedtargets.org/companies-taking-action
SBTのロゴが使える
SBTのロゴを、SBT認定されていない企業が使うことはできません。SBT認定されれば、ロゴをパンフレットやWEBサイトに使うことができます。※どこに掲載するかは、承認が必要です。
SBT認定済みの大企業の取引先に選ばれやすい
SBT認定済みの大企業は、下記の図のようなサプライチェーン目標を持っていることがあります。下図の「SBT目標を設定させる」「科学に基づく削減目標を設定させる」というのは、中小企業向けSBT認定を持っているか、ということにつながります。
つまり、中小企業向けSBT認定を持っていれば、こうした企業と取引ができる、競争で優位に働くと考えられます。
※日本で、中小企業版SBT認定企業は現在10社
出典:環境省
※こちらもご参考まで。中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック
最後に
今回ご紹介した内容は、すでに公開されている英文の情報を、わかりやすく解説したものです。
弊社の中小企業向けSBT認定までの経験を共有することで、同じように中小企業向けSBTに関心がある方々にとって、取り組むハードルを少しでも下げ、「挑戦してみよう」という機会につなげられたら、嬉しいです。
SBTの目標を設定すると、世界の基準に照らし合わせたときの自社の位置が良くわかるようになります。他社の取り組みに対して親近感を持つことができ、削減への動機づけにもなり、視野が広がります。
これまで関心のなかった経営層への理解につながる可能性もあり、色々な意味でおすすめです。
弊社では、中小企業向けのSBT認定を目指す企業様に対して、SCOPE算定から認定までのお手伝いをしていきたいと考えています。ご関心がありましたら、お気軽にお問い合わせください。