2018年10月、弊社のお客様から『フロンの立入検査があるから書類を確認したい』という問い合わせがありました。各都道府県ではフロン排出抑制法の立入検査が行われています。2015年の立入検査実施件数は2533件でした。(管理者が889件、フロン充填回収業者が1364件)
※環境省に問い合わせたところ、定期的に出している件数ではないため、2016年以降のデータは現状ないそうです。
出典:環境省「平成28年度フロン排出抑制法施行状況調査の結果について」
東京都環境局から「フロン排出抑制法の管理者への立入検査を明後日実施したいのですがいかがでしょうか」と電話が来てから、慌てて準備することも多いと思います。ただそれだと、立入検査当日に必要な書類がそろわない可能性があります。法違反で罰金という事態にならない為にも、何を準備すれば良いのか、そもそも立入検査はどのように行われるのか、確認が必要です。
立会検査の概要
【立入検査の所要時間】1~2時間程度※対象機器の数による
【主な検査事項】関係書類確認、現地確認、ヒアリング
【立入検査時に準備が必要な書類】
- 機器リスト
- 点検整備記録簿
- 各種証明書(充填証明書、回収証明書、再生証明書、破壊証明書)
- 行程管理表(回収依頼書、委託確認書、引取証明書)※過去3年間に廃棄した場合
- 簡易点検簿、定期点検結果
【確認される事】
- 管理者は誰か
- 管理体制はどのようなものか
- 点検整備記録簿、簡易点検簿、定期点検結果、充填証明書、回収証明書をもとに
~ 点検整備記録簿は規定された項目が記載されているか
~ 点検を既定の項目、頻度で行っているか
~ 漏えい、故障時に修理せず充填していないか(禁止事項) - 行程管理表(域廃棄時)の回収依頼書、委託確認書※委託した場合、引取証明書をもとに
~ 充填回収業者にフロン類を引き渡しているか
~ 回収依頼書等を交付しているか、写しを保存しているか
~ 引取証明書の交付を受け、保存しているか - 算定漏えい量の算定をしているか、報告をしているか
管理者ごとに1年度分の漏えい量を算定(充填証明書と回収証明書から算出)
【充填量㎏-回収量kg】×冷媒の地球温暖化係数GWP/1000
指摘例
(1)エアコンしか点検していない
(2)点検が行われていない、機器リストが未作
(3)定期点検が有資格者により実施されているかわからない
※通常定期点検の報告書には技術者名と技術者番号が記載されています。
(4)点検整備記録簿の記録、保存がない
~機器ごとの修理、点検の履歴がない
~記録すべき事項が全て記載されていない
(5)算定漏えい量を算定していない
点検整備記録簿をもとに
~ 定格出力の記載はあるか
~ 点検、修理の点検者は誰か
~ フロンの種類、量は記載されているか
~ 1年程度の間に異常があった機器はあるか、どのように対応したか
~ 修理予定がある場合、時期はいつか
~ 機器の整備時にフロン類を充填・回収したのはいつか、
そのときの充填回収業者は誰か、充填・回収したフロン類の種類、量
室外機設置場所の状況をもとに
~ 機器銘板の情報と点検記録簿記載事項に差異はないか
~ 機器の設置環境は適切か
~ 機器に損傷をもたらすような振動源が周囲にないか
~ 機器周辺に点検修理のために必要な作業空間は確保されているか
(荷物などでふさがれていないか)
~ 機器周辺の清掃は行われているか(植物やごみが付着していないか)
~ 機器に異常がないか
~ 事業所内に本来点検すべきなのに点検していない機器はないか
(冷水器、給茶機、除湿器、製氷機、自動販売機、ヒートポンプ式給油機等)
廃棄時の書類をもとに
~ 機器廃棄時の依頼は書面にて行っているか(3年保存しているか)
~ 回収依頼書をもとに登録済みフロン類充填回収業者に依頼しているか
~ 委託確認書はあるか
~ フロン類充填回収業者から発行された引取証明書(または写し)を3年保存しているか
~ 引取証明書が期限までに交付されない場合は所管に報告しているか
~ 破壊(もしくは再生)証明書により処理が確認できているか
他
~ 1年間の漏えい量はどれくらいか
~ 古い機器の買い替え予定はあるか
~ 機器を管理する上で苦労していることや工夫していることはあるか
(廃棄予定の機器もフロンが充填されている場合は対象。フロンを抜けば点検は不要)
出典:
環境省 管理者手引き
東京都環境局
埼玉県 フロン排出抑制法 管理者への立入検査
最後に
東京都や埼玉県はフロン排出抑制法の立入検査について情報を公開していますが、それ以外の都道府県でも情報公開していないだけで、立入検査は実施しています。
今年立入検査がなくても、来年あるかもしれません。いつ立入検査がきても慌てず対応できるように、不明点や必要書類を今のうちから確認しておくことをお勧めいたします。
「書類が見当たらない、紛失してしまった」という場合、破壊証明書であれば写しの保管でも良いとされているので、写しを送ることは可能です。また、充填証明書と回収証明書は再発行可能です。
ご不明な点や、確認したいことなどあれば、お気軽にお問合せください。