前回の記事では、実際のCDPの採点のしかたをお届けしました。
今回は、最終的な企業の評価であるAからD-までのスコアの出し方について、弊社エコ・プランで自己採点した結果を用いてご紹介します。
なお、今回ご紹介する内容はエコ・プランが独自に解釈したものになります。CDP公式の説明はCDPのホームページより、「コーポレート完全版質問書 スコアリングイントロダクション(日本語版)をご覧ください。
得点率を出そう!
CDPスコアリングイントロダクションを基にエコ・プラン作成
上の表は、このシリーズの最初の記事でご紹介した、ランクの決定方法を表した図です。これを見ると、4つの採点項目の得点率を参照して、ランクを決めていくことが分かります。そのため、まずは各採点項目の得点率を算出する必要があります。
前回、Excelでこのような表を作り、得点を入力しました。ここからSUM関数で、各項目の得点と配点をそれぞれ合計します。
そして、(得点)/(配点)で、それぞれの採点項目の得点率を算出します。
これを先ほどの表に当てはめます。開示項目と認識項目は80%を超えており、マネジメント項目は45%から80%の間なので、エコ・プランのスコアはBランクとなります!
……と言いたいところですが、実はここからが本番です。
回答に「重みづけ」がされる?
マネジメント項目とリーダーシップ項目では、企業の業種ごとに回答に重みづけがされています。
いきなり何のことだと混乱されるかもしれませんが、まずは下のExcel画面をご覧ください。
CDP_Climate_change_Scoring_Category_Mapping.xlsx より(※英語)。画像は”General”セクター(業種)のものです。その他の業種の場合は、下のタブで切り替えられます
これは、CDPが公表している「質問ごとのカテゴリ表」です。真ん中のC列は質問番号を示しており、その左はその質問のカテゴリを表しています。
CDPの各質問は、「カーボンプライシング」「リスク開示」「SCOPE1&2」など18種類のカテゴリに分類されています。
環境対策においてどの分野の対策が重要なのかは、業界ごとに大きく異なります。例えば、石炭部門の企業は世界各国で規制や圧力が高まっているため、それらを組織の事業戦略に取り入れて対応することが重要です。食品業界は製造から小売まで様々なサプライヤーと関与するため、脱炭素に向けてバリューチェーンに関与することが必要になります。
業界ごとに必要な対策は異なります。その違いを反映し、その業界にとって必要な対策に重きを置いて採点する、というのがこの重みづけの趣旨だそうです。
さて、続いて下の表をご覧ください。
CDP Climate Change Scoring Category Weightings 2024 より(※英語)。画像は”General”セクター(業種)のものです。その他の業種では、数値が異なります
こちらは、エコ・プランが回答した”General”という業種の、18カテゴリの重みづけの表です。濃い棒がリーダーシップ項目、薄い棒がマネジメント項目の重みを表しています。
例えば一番下、”Verification(Incl. Emissions)”(=第三者検証)の濃い棒は10.0%と書いてあります。これは、リーダーシップ項目の得点のうち10%をこのカテゴリが占めているということを表しています。
これを使ってどう重みづけをするかというと、
① 18カテゴリそれぞれで得点率を計算します。
② カテゴリごとの得点率と、そのカテゴリのウェイト(重みづけのこと。上の棒グラフの数値)を掛け合わせます。
③ ②を18カテゴリ分足し合わせたものが、マネジメント項目/リーダーシップ項目の得点率になります。
こうして算出された得点率が、スコア付けに用いられます。
結果、開示項目は100%、認識項目は89%、マネジメント項目は50%、リーダーシップ項目は25%となりました。最初の表に照らし合わせればBランクを維持できそうですが、実はまだもうひとつ見なくてはいけないものがあります。
最後の”関門”「必須要件」
今までのランクのつけ方では簡単にするため省略してきましたが、上のランクに上がるためには必須要件というものを満たす必要があります。
上の図のように、必須要件には「認識必須要件」「マネジメント必須要件」「リーダーシップ必須要件」「Aランク必須要件」の4種類があり、それぞれDからC-、CからB-、BからA-、A-からAに上がるために必要になります。
必須要件にはいくつかの項目がありますが、そのひとつでも満たさなかった場合、上には上がれない「関門」となっています。
必須要件の内容は上のように、特定の質問で特定の回答をするといった内容です。DからC-に上がるためには「認識」と書かれた列、CからB-に上がるためには「マネジメント」と書かれた列、BからA-に上がるためには「リーダーシップ」の列の項目を全て満たす必要があります。
上に書かれた項目は一部のみです。「認識必須要件」は計5つ、「マネジメント必須要件」は計7つ、「リーダーシップ必須要件」は計16の項目があります。
なお、上の一覧は金融業以外の企業用の表です。業種によって満たすべき項目数も増えるので、注意が必要です。
さて、自己採点の結果、エコ・プランは「認識必須要件」「マネジメント必須要件」どちらもすべての項目をクリアしていました。そのため、ようやくエコ・プランのランクはBランクと決定しました。
最後に
ここまで、3回にわたってCDPの自己採点とスコアのつけ方についてご紹介してきました。
非常に複雑で、取っつきにくいイメージを持たれるかもしれませんが、回答を見つめ直すことで、自社の環境問題に対する強みや弱点が見えてきます。
今後、環境問題に関する規制やサプライヤーからの依頼は増えていくと思われます。変化していく時代に対応できるように、今から備えていくことはとても大切だと思います。
ぜひ、一度CDPを自己採点してみてはいかがでしょうか。