年の瀬も近づき、忘年会シーズンとなるこの頃。
弊社の忘年会は「望年会」と書き、「来年を望んで前向きな時間を過ごそう」という明るい意味が込められています。タイプミスかと思った方、ご安心ください。
望年会は各拠点やオフィスで開催し、前半は社長、副社長、監査役などからお話を頂き、後半は歓談しながらお酒や食べ物を頂きます。
そんな今年の望年会では、当日各拠点で排出される二酸化炭素をカーボンオフセットすることになりました!
今回は、他に類を見ない「望年会のカーボンオフセット」について、簡単にではありますが流れをご紹介します。
目次
そもそも「カーボンオフセット」って何?
「カーボンオフセット」は、環境省によって以下のように説明されています。
カーボン・オフセットとは、日常生活や経済活動において避けることができないCO2等の温室効果ガスの排出について、まずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方です(環境省HPより引用)
つまり、温室効果ガスの排出削減をして、それでも削減しきれなかった部分について、他所から削減量を買うことで削減したとみなす、ということです。
「削減量を買う」とは、排出量を削減した企業や団体が売った「削減したという権利」を、『クレジット』と呼ばれる形で買うことです。
クレジットで排出量を売買することで、買った側(オフセットした側)は一部の国への報告に記載ができたり、企業価値の向上、ブランディング、投資家へのアピールなどが期待できます。一方の売った側も、売却益で新たな削減投資ができるなど、削減のための資金循環ができる仕組みとなっています。
サッカーのJリーグでは、2023シーズンの全公式試合をカーボンオフセットすると表明しているなど、カーボンオフセットの取り組みは多くの企業・団体に広まっています。「カーボンオフセットに対応!」と紹介している自動車保険のCMも見たことがあるかもしれませんね。
カーボンオフセットってどんな流れ?
カーボンオフセットガイドライン Ver.2.0(環境省)より引用
カーボンオフセットの基本的な流れは、「知って」「減らして」「オフセット」です。どういうことかというと、
- 対象の活動によって排出される温室効果ガスの量を知って、
- 排出量をできるだけ減らして、
- 削減しきれなかった部分をオフセットする。
この流れで行います。
また、透明性や信頼性を高めるために、行ったオフセットの情報提供を行うことも同等に重要です。
排出量を「知る」-望年会での排出量はどのくらい?
ここからは、流れに沿って排出量を算定していきます。
まずは、温室効果ガスの排出量を知るところから始めます。
とはいっても、自社の排出量は誰かが教えてくれたり、本に書かれたりしているわけではありません。自分で算定する必要があります。
排出量の計算方法の基本は活動量×排出係数。様々な場面で排出量算定に使われる、単純で分かりやすい式です。それぞれを説明すると、
活動量は例えば電気の使用量[kWh]、ガソリンの使用量[kg]、消耗品の購入金額[円]など、実際に使用した量。
排出係数は環境省などのHPに記載されている、単位量(1kWh、1kg)当たりの二酸化炭素排出量を表した数値です。
今回の算定では、算定範囲を「望年会当日に全拠点で排出する温室効果ガス」とし、「会場(各拠点)への移動」「会場での電気の使用」「飲食料・消耗品の使用」「廃棄物の処理」の4点が排出源と仮定して計算しました。4点それぞれについて、1つずつ順番に算定していきます。
(1)会場(各拠点)への移動
会場は各社員が勤務している拠点となるため、会場への移動は通勤と同義となります。
ほぼすべての社員が参加するため、2022年度のSCOPE3カテゴリ7(通勤)算定に用いたデータより、簡易的に1日平均の通勤費を計算し、当日の交通費としました。また、今回の算定に使う排出係数は、(2)以外は全て環境省の排出原単位データベース(リンク先ページの中段「排出原単位データベース」の項参照)より引用しています。
算定結果は、0.163t-CO2となりました。
(2)会場での電気の使用
エコ・プランは本社、大阪営業所、杉並CKTC以外の拠点では再エネ由来の電力メニューに切り替えているため、この3拠点以外の計算については割愛させていただきます。
上記3拠点について、(1)と同様昨年のSCOPE2算定の際に使用した2022年12月の電力データを用い、勤務日数で割って1日平均の電力使用量を計算しました。その上で、使用している電力会社の排出係数を環境省の「電気事業者別排出係数」より引用し、算定しました。
算定結果は、0.218t-CO2でした。こちらについては、望年会終了後に当月の実際のデータを頂いて、より実績に即した算定を行う予定です。
※本社、杉並CKTCの係数は東京電力エナジーパートナー㈱の「メニューL(残差)」、大阪営業所は関西電力㈱の「メニューI(残差)」の数値を利用。端数は四捨五入して表示しているため、3つの合計と赤字の部分は一致していません
(3)飲食料・消耗品の使用
経理担当の方より望年会の予算を伺い、内訳を「ビール類」「ジュース類」「おつまみ」「使い捨て容器」と仮定。品目ごとに対応する排出係数を探して算定しました。
算定結果は、0.932t-CO2と、最も多い排出源(ホットスポット)になりました。こちらについても、望年会終了後に再度算定する予定です。
(4)廃棄物の処理
(1)と同様に、2022年度のSCOPE3カテゴリ5(廃棄物)算定データより1日当たりの排出量を算定しました。
算定結果は、0.00361t-CO2です。
以上を合計して、忘年会の排出量の予測は1.317t-CO2となりました。
排出量を「減らす」-なぜ、どうやって減らすの?
排出量を算定したら、その排出量をできるだけ減らす努力をしなければいけません。
これは、カーボンオフセットが自分たちが削減をしなくてもよいという免罪符になってはいけないからです。
「カーボンオフセットをして排出量を0にするから排出削減活動をしなくてもいい」という考えは、いわゆる「グリーンウォッシュ」となり、環境対策をしているように見せかけているだけの行動になります。カーボンオフセットはあくまでも「削減しきれなかったときの奥の手」ということを肝に銘じておく必要があります。
今回は以下の取り組みを行って、削減量を減らしていきたいと考えています。
- 当日は公共交通機関の利用を推進する
- 環境配慮型の製品を使用するように要請する
- 食べ残しをできるだけ少なくする
- ごみを分別する etc.
これらの取り組みは、参加する社員にもお知らせし、一緒に削減に取り組んでいただきます。
イベントの規模としては小さく、できる取り組みもそれほど大きくはないですが、こういった小さなことから社員の方に啓発活動を行っていくことが、脱炭素に向けて重要なステップだと感じます。
「オフセット」する-どこから調達する?
最後のステップは、排出した二酸化炭素をオフセットすることです。
オフセットとは前述の通り、他人が削減した温室効果ガスの排出量を「クレジット」として買い、買った人が排出削減をしたとみなすものです。2023年10月に東京証券取引所でカーボン・クレジット市場が本格始動するなど、脱炭素に向けた方策の一つとして年々存在感を増しています。
本来はイベント等の前にオフセットを行うことが望ましいですが、環境省の「会議・イベントにおけるカーボン・オフセットの取組のための手引き」によれば、時間的制約がある場合や、開催実績に基づいてクレジット量を決める場合は、イベント後にクレジットを調達してもよいとされています。
今回は、実績に基づいて調達を行うため、望年会開催後にクレジットを調達します。調達元はカーボン・クレジット市場を予定しております。
最後に
カーボンオフセットは大企業が主導したり、大きなイベントで行ったりするイメージが強いですが、仕組み自体に中小企業や小規模イベントを制限する要素はありません。そのため、文化祭や社内のイベント、セミナーから誕生日パーティーまで、様々な場面でカーボンオフセットを行うことができます。
また、計算式も単純で、特別なソフトも必要ありません。データさえ集められれば、Excelひとつでできてしまいます。今回の算定も、Excelを用いて行いました。
今回ご紹介したのは簡単な流れのみとなりますが、少しでもカーボンオフセットに興味を持っていただけたのであれば幸いです。
こちらもご覧ください。