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【都道府県別 CO₂排出量!】少ない県、多い県、削減率が高い県?人口比との関係は?

エコトピック
脱炭素関連
都道府県別 CO₂排出量イメージ画像

日本は2050年までに「カーボンニュートラル」を目指し、令和3年、温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)が改正され、地方自治体に対しても、施策目標が追加されることになりました。

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各都道府県の温室効果ガスの削減は、成果が出ているのでしょうか。

今回は、各都道府県や、都道府県以上に成果を上げている市区町村について、公開されている二酸化炭素排出量のデータを元に様々な観点から比較し、紹介します。

各都道府県の温室効果ガス排出量は公開されています!

環境省の「部門別CO₂排出量の現況推計」というページでは、各都道府県及び各自治体の発生起源別のCO₂排出量が公表されています。

環境省 「部門別CO₂排出量の現況推計」

参照:環境省 「部門別CO₂排出量の現況推計」

この記事では、この統計において最新年である2020年度に注目し、各地域のCO₂排出削減の取り組み状況を調査します。 

2020年度の都道府県別CO₂排出量ランキング!

2020年度の都道府県別CO₂排出量は、以下のようになっていました。

排出量の多い県 排出量の少ない県 
東京都60,991鳥取県3,581
愛知県60,637山梨県5,055
千葉県59,600佐賀県5,119
神奈川県55,050奈良県5,208
北海道45,773島根県5,395
(単位は1,000 t-CO₂)
都道府県別 CO₂排出量 人口比

※上記グラフは温室効果ガスをCO₂換算した各都道府県の排出量と、人口当たりの排出量をまとめたものです。
※この記事のグラフでCO₂排出量と記載があるものは、温室効果ガスのCO₂換算の排出量となります。

CO₂排出量の多い県は、人口の多い県(千葉県、東京都、神奈川県、大阪府)や工業が発展している県(愛知県、岡山県、広島県)に多いことがわかります。

また、CO₂排出量の少ない県は人口の少ない県(鳥取県、山梨県、佐賀県、島根県)に多いです。

都道府県別CO₂排出量削減率ランキング

次に、2015年から2020年にかけてのCO₂排出量の削減率が最も高かった県、低かった県をご紹介します。

削減率の高い県 削減率の低い県 
奈良県28.7%栃木県10.2%
鳥取県27.3%三重県10.7%
島根県27.2%愛知県11.6%
岡山県25.6%沖縄県12.3%
和歌山県25.5%愛媛県13.5%

下のグラフは、各都道府県の5年間の削減の推移を、地域ごとにまとめたものです。
(単位は1,000 t-CO₂)

都道府県別 CO₂削減推移(北海道、東北)
都道府県別 CO₂削減推移(関東)
都道府県別 CO₂削減推移(中部)
都道府県別 CO₂削減推移(近畿)
都道府県別 CO₂削減推移(中国・四国)
都道府県別 CO₂削減推移(九州・沖縄)

※上記グラフでは排出量が少ない都道府県の削減は見えにくくなっています。ご了承ください。
※上記グラフでは6年間のデータをまとめましたが、環境省では1990年からデータが公開されています。
※家庭部門、産業部門、運輸部門など、部門ごとの排出量も比較すれば、より詳細な分析が可能です。

CO₂排出量が最も少ない5県にランクインしていた奈良県、鳥取県、島根県は、削減率が最も高い3県であるため、人口が少ないから排出量が少ないわけではなく、CO₂削減の取り組みに力を入れていることがわかります。

特に奈良県は人口が決して少なくないものの、排出量、削減率ともに優秀です

一方、削減率が低い県でも、2015年と比較して10%以上は削減が進んでおり、全く対策が取られていないわけではないことがわかります。
ただ、削減率が20%以上の県が半分近くを占めていることを考えると、これらの県はまだまだ脱炭素の取り組みに力を入れる必要があると言えます。

ここで、削減率が最も高かった奈良県がいかに脱炭素を実現してきたのか、解説いたします。

奈良県の脱炭素に向けた取り組み

奈良県には5年ごとに策定されている「奈良県環境総合計画」というものがあり、環境問題全般についての取り組みと目標が記載されています

ここで挙げられている低炭素社会実現に向けた主な取り組みとして、以下のようなものがあります。

・バイオマスエネルギー等の再生可能エネルギーの導入促進
・家庭・事業所等の自立分散型エネルギーの導入促進
・小水力発電の導入支援
・熱エネルギーの利活用促進
・エコカーの導入
・公共交通の維持確保及び利用促進
・健全な森林の整備

また、奈良県には、脱炭素や省エネ化を進めている団体や組織が多く存在します。これらの各団体や組織がそれぞれ取り組みを進め、それらの積み重ねによってCO₂削減が実現されていることは間違いないでしょう。

一人当たり、単位面積あたり、部門別の都道府県別CO₂排出量

一人あたりの都道部県別CO₂排出量

一人あたり排出量の多い県 一人あたり排出量の少ない県 
大分県22.1奈良県3.93
岡山県18.4山梨県4.34
山口県18.4佐賀県4.52
広島県14.1奈良県4.65
和歌山県12.9島根県4.69
(単位はt-CO₂)
都道府県別 1人当たりのCO₂排出量(全国)

意外にも、東京都、大阪府などの都会は一人当たり排出量が少なく、中国地方の瀬戸内海側の県で一人当たり排出量が多い傾向にあることがわかります。

東京都、大阪府は人口がとても多い分、排出量ももちろん多いですが、公共交通機関が充実していること、人が密集して生活していること、昼間はオフィスビルに人が集中することなどから、エネルギーを効率的に使用できているという仮説が立てられます。

一方で、中国地方の一人当たり排出量が大きくなっているのは、瀬戸内工業地域の影響だと考えられます大規模な工場地帯があり、人口も少ないため、一人当たりCO₂排出量が大きいと考えられます。

また、排出量が少ない方から数えて4位であり、削減率は最も高い奈良県が、一人当たり排出量に関しても最も小さいことがわかります。

次に、民間部門の一人当たりCO₂排出量については、以下のようになりました。

都道府県別民間部門の人口比排出量 グラフ

民間部門の一人当たりCO₂排出量は北海道が最も大きいです。これは、北海道の気候や地域性に起因していると考えられます。冬場の厳しい寒さのために暖房が多用されることから、CO₂排出量が多くなっていると考えられます。また、広大な土地を人やモノが移動する際にCO₂排出が伴うことも理由の一つとして挙げられます。

また、全体的な傾向として、人口の多い地域は民間部門の一人当たりCO₂排出量が小さく、人口の少ない地域は一人当たりCO₂排出量が大きいです。

単位面積あたりの都道部県別CO₂排出量

単位面積あたりのCO₂排出量は、地域ごとに特徴がはっきりと分かれています。

北海道、東北地方面積の大きい都道府県の多いこの地域は、単位面積あたりのCO₂排出量が最も小さい地域です。北海道、秋田県、岩手県、山形県が単位面積あたりのCO₂排出量が最小の4県です。

関東地方面積は広くはないものの、人口が多く、CO₂排出量も多いこの地域は、単位面積あたりのCO₂排出量が最も大きい地域です。東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県はそれぞれ単位面積あたりの排出量が1番目、2番目、5番目、6番目の多さです。

中部地方:中京工業地帯のある愛知県(4番目)や三重県(16番目)を除けば、中部地方の県は単位面積あたりのCO₂排出量は小さいです。

近畿地方:人口の多い県である大阪府(3番目)や兵庫県(8番目)を始めとし、この地域の県は面積あたりのCO₂排出量が大きい傾向にあります。

中国地方中国地方の県は、山陰地方と山陽地方で大きく傾向が分かれます山陰地方の2県である島根県(43番目)と鳥取県(38番目)は、面積あたりのCO₂排出量が非常に小さいのに対して、山陽地方の3県である岡山県(10番目)、広島県(12番目)、山口県(13番目)の面積あたりのCO₂排出量は大きいです。

四国地方四国地方も、中国地方と同様に、瀬戸内海側の県である香川県(11番目)と愛媛県(18番目)の面積あたりのCO₂排出量が大きく、南側の県である徳島県(30番目)と高知県(42番目)の面積あたりのCO₂排出量は小さいです。

九州地方:福岡県(7番目)は面積あたりのCO₂排出量が大きいものの、その他の県は14番目~39番目に位置しており、高くも低くもないです。

部門別の都道部県別CO₂排出量

下記は都道府県別の部門別CO₂排出量のグラフです。
(単位は1000t-CO₂)

参考になるよう、人口当たりの民間部門のCO₂排出量を折れ線グラフで追加しました。

都道府県別 部門別CO₂排出量と人口あたりのCO₂排出量(北海道 東北)

北海道は、すべての部門について満遍なくCO₂排出量が高いです。その中でも運輸部門の排出が比較的他県に比べて多く、2番目に多い都道府県になっています

都道府県別 部門別CO₂排出量と人口あたりのCO₂排出量(関東)

排出量の多い都道府県が多い関東地方ですが、その構成は県によってかなり異なります。工業が発展している茨城県や千葉県は産業部門の排出が多く、オフィスビルが立ち並ぶ東京都や神奈川県は業務部門の排出が多いです。

都道府県別 部門別CO₂排出量と人口あたりのCO₂排出量(中部)

愛知県の産業部門の排出量の多さが目立ちます。愛知県は産業部門のCO₂排出量が、千葉県に次いで2番目に大きいです。

都道府県別 部門別CO₂排出量と人口あたりのCO₂排出量(近畿)

大阪府は東京都や神奈川県と同様に、業務部門や家庭部門のCO₂排出量が大きい都会型の排出となっています。一方で、兵庫県は愛知県や千葉県のような工業型の排出になっていることがわかります。

都道府県別 部門別CO₂排出量と人口あたりのCO₂排出量(中国 四国)

瀬戸内工業地域がある岡山県、広島県、山口県、愛媛県は、千葉県や愛知県と同じように、産業部門が大半を占めるような構成になっています。

都道府県別 部門別CO₂排出量と人口あたりのCO₂排出量(九州 沖縄)

福岡県は都会型の、大分県は工業型の排出の分布になっています。大分県は、総排出に占める産業部門の排出の割合が80%弱であり、全都道府県の中で最も大きいです。

CO₂排出量削減率の高い主な市区町村

 2015年2020年削減率
北海道室蘭市2,6021,24652.1%
茨城県鹿嶋市1,8501,13838.5%
千葉県君津市3,2803,11934.6%
福岡県苅田町3,9302,57134.6%
山口県宇部市3,2122,11334.2%

削減率の高い市区町村では、わずか5年間の間に、30%を超える削減が実現できています。

室蘭市に関しては、5年間で排出量を半分以上削減しています。

室蘭市の脱炭素に向けた取り組み

室蘭市が2015年から2020年にかけてCO₂排出量を半分以上削減できた理由として、2015年から始まった室蘭市グリーンエネルギータウン構想という施策が挙げられます。

この施策はその先進性が評価され、国土交通省の「第一回先進的まちづくりシティコンペ」において国土交通大臣賞を受賞しました。

施策における目標として、2020年までにグリーンエネルギー(水素エネルギー、再生可能エネルギー・未利用エネルギー)の導入量を2012年度と比較して倍増させることが掲げられていました。

具体的には以下のように多岐にわたる取り組みが行われました。

・移動式水素ステーション及び燃料電池自動車を道内で初めて導入
・家庭用燃料電池を市営温水プールに整備
・民間事業者による水素ステーション用部品の製品・開発
・販売用宅地における各戸の家庭用燃料電池の整備
・公共施設に風力・太陽光発電を導入
・国内最大級のバイオマス発電所の稼働
・下水処理場のバイオガスを活用した発電事業
・観光の要である白鳥大橋のイルミネーションのLED化
・家庭への燃料電池と太陽光発電やHEMS、LED等を併用した導入に対する支援

参照:国土交通大臣省 室蘭グリーンタウン構想

最後に

今回は都道府県別の温室効果ガス排出量について、人口比や面積比といった角度も含めて、ご紹介させていただきました。

都道府県だけでなく、市町村レベルでも、温室効果ガス排出量が公開されています。

環境省の【脱炭素先行地域】の取り組みが始まり、先進的に取り組む地域に資金や人材が投入され、今後、都道府県ごとの温室効果ガス排出量に変化が起きてくると考えられます。

成果が出た地域の施策が、全ての地域で導入できるとは限りませんが、貴重な参考情報となります。

どの地域で、どんな削減結果が出たのか、どうやって削減したのか、これからも客観的な視点で、他の地域と比較しながら追いかけていく価値がありそうです。

お住まいの地域や、職場の地域、お隣の地域などについても、ぜひご自身で確認してみてください。

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