弊社は、環境省の【TCFDを活用した経営戦略立案のススメ】というガイドブックをもとに、TCFDの要求項目の開示に挑戦しています。
このガイドブックの6つのステップで使われている書式を再現し「テンプレート」を作成しました。今回は【事業インパクト評価】です。
弊社と同じようにTCFDのシナリオ分析に挑戦する企業様にも、お役に立てるよう、共有いたします。参考程度に、ご活用ください。
◆これまでのTCFD記事については下記をご覧ください。
1,事業インパクト評価って?
事業インパクト評価とは、【シナリオ群の定義】で作成したシナリオが組織に与える戦略的・財務的影響を評価します。
ガイドブックによる実施の流れは以下の通りです。
①リスク・機会が影響を及ぼす財務項目の把握
②算定式の検討と財務的影響の試算
③成行の財務項目とのギャップを把握
リスク・機会が影響を及ぼす財務項目の把握
【事業インパクト評価】でまず行うのは、これまでのステップで作成してきたリスクや機会、シナリオが、損益計算書や財務諸表の項目のどれに影響するか、整理することです。
大まかに、売上―費用=利益であることから、【売上】と【費用】、どちらに影響するのか、整理していきます。
下記のような内部データを使用することで、より企業の実態と近い試算をすることができます。
・「事業別/製品別売上情報」
・「操業コスト」
・「原価構成」
・「GHG 排出量情報」等
※出典:環境省の【TCFDを活用した経営戦略立案のススメ】
算定式の検討と財務的影響の試算
続いて行うのは、それぞれの財務項目について、財務的影響を試算できる算定式を検討します。
試算可能な財務項目から始めるとスムーズです。
例えば、今、導入が検討されている炭素税については、
【 自社のSCOPE1,2のCO₂排出量 】×【 t-CO₂あたりの炭素税 】(将来情報より入手)という算定式で、財務的影響を試算することができます。
◆数値化できない要素や、科学的根拠が乏しく、定量的な試算ができないリスク、機会項目は、外部有識者へのヒアリングや、継続的なモニタリング等が有効。
◆【検討済み】/【未検討】のリスクを整理し、次のアクションを明確にする。
◆数値化できなかった要素をまとめておき、最新情報を入手して、継続的に記録していく。
成行の財務項目とのギャップを把握
事業インパクト評価の仕上げは、算定結果が今後の事業展望に、どの程度の影響を及ぼすかを把握します。
気候変動の影響を考慮する場合と、しない場合の財務状況や利益を可視化することで、経営戦略のイメージを具現化します。
2,事業インパクト評価テンプレート
今回は、ガイドブックに掲載されている事業いくつかのインパクト評価のひな形のうち、一つを共有します。
◆下記のようなエクセルシートです。
追加編集等してご活用いただければ幸いです。
3,最後に
事業インパクト評価では、これまでのステップで抽出してきたリスクや機会、シナリオ群を元にして、財務影響を数値化、可視化し、気候変動の影響を含めない場合とのギャップを把握することができます。
また、算定方法や金額感を、各事業部が納得できるものにすることで、会社として気候変動への危機感や認識を揃えることができます。
まずはできる部分から取り組んでみることをお勧めいたします。
◆【TCFDシナリオ分析テンプレート】6つのステップ ⑤対応策の定義
◆TCFD義務化?!TCFDとシナリオ分析、SCOPEとの関係は?
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