弊社は、環境省の【TCFDを活用した経営戦略立案のススメ】というガイドブックをもとに、TCFDの要求項目の開示に挑戦しています。
このガイドブックの6つのステップで使われている書式を再現し「テンプレート」を作成しました。今回は【③シナリオ群の定義】です。
◆ステップ①と②は下記をご覧ください。
【TCFDシナリオ分析 テンプレート】6つのステップ ①準備と設定 ②リスク重要度評価
弊社と同じようにTCFDのシナリオ分析に挑戦する企業様にも、お役に立てるよう、共有いたします。参考程度に、ご活用ください。
1,シナリオ定義って?
シナリオ群の定義について、【TCFDを活用した経営戦略立案のススメ】には下記のように記述されています。
シナリオ群の定義は、具体的に
①シナリオの選択、
②関連パラメータの将来情報の入手、
③ステークホルダーを意識した世界観の整理
の流れで実施する。
情報量や汎用性の高さ、競合の事例を加味しつつどのようなシナリオを選択するか、
また、自社内の関連部署と世界観をどうすり合わせていくかがポイントとなる。
シナリオとは ” 物事の進行について(さまざまな可能性を考えに入れて)仕組んだ筋書き ” という意味があります。
つまり、TCFDでシナリオ分析をするうえで、10年後、30年後の世界がどのように変化しているのか、知る必要がありますが、個人の主観や思い込みで予測するのではなく、信頼性のある外部組織が公開または有償で提供しているデータ、レポートを使って、考えていく必要がある、ということです。
このシナリオは、ステップ②のリスク重要度評価を抽出するうえでも活用できます。
では、具体的にどんな組織がどのようなレポートを作っているのでしょうか。ガイドブックに紹介されているデータベースをご紹介します。
2,シナリオのデータベースはどんなものがあるの?
ガイドブックに紹介されているデータベースは下記のとおりです。
【シナリオ群の定義についてのデータ】
◆IEA の WEO(World Energy Outlook)
◆SSP(Shared Socioeconomic Pathways)
◆PRI の IPR(Inevitable Policy Response)
ガイドブックに紹介されていた関連パラメータについてのデータは下記のとおりです。
【関連パラメータについてのデータ】
移行リスクについては
◆IEA のレポート
◆PRI のレポート
◆SSP のレポート
物理的リスクについては
◆気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)
◆物理的リスクマップ
◆ハザードマップ等
また、論文なども活用できます。
今回、ガイドブックの事例をもとに、どのようなシナリオを定義しているのか、いくつか抜粋し、下記のエクセルにまとめました。
シナリオ群の定義を作成する際に、参考にしてください。
※IEAデータは有償の為、具体的データは「〇」として表記しました。IEAのデータが必要な場合は、個別にIEA公式ウェブサイトからご購入ください。
◆IEA WEO 1ユーザー $550(¥62,785※2021年12月7日時点)
その他のデータについては、公開されているデータやレポートをもとにしています。実際にご活用の際は、元データをご確認の上、著作権等ご確認いただき、ご使用ください。
※テンプレートの具体的データについて弊社は一切責任を負えません。あくまで参考としてください。
将来の社会像を整理すると?
続いて行うのは、シナリオ群の定義データや、リスク重要度評価をもとに、「ステークホルダーを意識した世界観の整理」をしていきます。ガイドブックには下記のように記載されています。
◆ガイドブック解説抜粋
この関連部署との世界観のすり合わせでは、事業部を含む関連部署との間で、納得感のある世界観を対話を通じて構築することが重要となる。
対話の際には、事業環境分析のフレームである 5forces 分析等を用いて、新規参入・売り手・買い手・代替品・自社を中心とした業界、等の要素により世界観を整理したり、ナラティブな文章やポンチ絵により世界観を視覚化したりすることにより、議論がしやすい資料を作成し、事業部とディスカッションを進めることも一案であろう。
また、社外の視点も取り入れて網羅性がある世界観を整理した後、社内の合意形成を図るのも有用である。
つまり、例えば地球の平均気温上昇が2度の場合と4度の場合の、業界における変化を図で表現します。
ガイドブックの事例ではイラストを効果的に使ったものなど、様々なイメージが紹介されていますが、ここでは【5Forces分析】の「新規参入」「売り手」「買い手」「代替品」「自社を中心とした業界」を要素とした略図をテンプレートにしました。
◆テンプレートのイメージ (4度の社会像イメージの下に2度の社会像イメージのテンプレートが入っています)
最後に
シナリオ群の定義は、日ごろから未来の様々なデータやレポートを見ている人にとっては、イメージできます。
ただ、そうした情報に普段触れていない人にとっては、どのようなデータを使えばいいのか、どこにそうしたデータがあるのか、どのような内容が掲載されているのか、全くわからないのではないでしょうか。
どこから調べればいいかわからない、費用や時間は極力かけられない、というご担当者様にとって、この記事がお役に立てると嬉しいです。
また、将来社会像イメージの整理についても、それぞれのつながりをイメージできると、見落としていたリスクや機会に気づくきっかけになります。
シナリオ群の定義をまとめる作業を通して得た気づきは、リスク重要度評価にも反映させ、より詳細な未来のイメージ作りや、企業戦略につながっていきます。テンプレートをたたき台等に使っていただければ幸いです。