※上記写真は紙ファイルデザイン案の手作りサンプル(2021年10月下旬納入予定)
脱プラスチックの取り組みが、様々な組織や企業で始まっています。弊社は、環境省の実証事業として採択されたアスクルさんの使用済みクリアファイルの回収に参加したことがきっかけで、どれだけクリアファイルを使用し、無駄にしているのか、気づくことができました。
そこで弊社はポリプロピレン製のクリアファイルを、古紙製の紙ファイルに切り替えることにしました。
目次
PP(ポリプロピレン)製クリアファイルのCO₂排出量を算定してみた
クリアファイルの原料は、ペットボトルと同じポリエステル(PET)や、ポリプロピレン(PP)、またポリ乳酸(PLA)からできているようです。弊社が使用していたクリアファイルの原料はポリプロピレン(PP)でした。
ポリエステルは、リサイクルして再原料化できるので、80%リサイクルポリエステル製のクリアファイルもあるようです。ただ、クリアファイルをPETの原料にするには、ポリエステル製のクリアファイルだけ回収して、専門業者に再資源化してもらう必要がありそうです。
弊社が使用していた、ポリプロピレン製のクリアファイルのリサイクルは、他のプラスチック製品と同様に、クリアファイルとは別のリサイクル製品になったり、サーマルリサイクル(焼却し、熱を回収する)されるようです。
今回は、弊社が使用していたポリプロピレン製のクリアファイルの製造から廃棄までのCO₂排出量を算定してみました。
資源採取から成型加工までの排出原単位
下記の資料から、ポリプロピレン(PP ※1:種類はOPP)の資源の採掘・採取~輸入~原・燃料精製コンビナート~原料モノマー・原料樹脂製造~成形加工の排出原単位を調べたところ、【2.6㎏-CO₂/㎏】でした。
※1
CPP:柔らかく、少し伸縮性がある
OPP:ハリがある
出典:経済産業省 1. 容器包装リサイクルに係る情報の収集・整理 5ページ
廃棄時の排出原単位 ※サーマルリサイクル(熱回収)想定
現在、クリアファイルは、一般的に資源ごみとして廃棄され、廃プラスチックとして処理されることが大半だと考えられます。そのため、一般的な廃プラスチックの排出原単位 2,550kg-CO₂/tを参考にしました。
出典:環境省の温室効果ガス総排出量算定方法ガイドライン 32ページ
ポリプロピレン(OPP)の資源採取から成型加工、そして廃棄までのCO₂排出量は?
弊社が使用しているクリアファイル(OPP)の資源採取から成型加工、そして廃棄までのCO₂排出量は1枚当たり118.45g-CO₂ となりました。
1枚のクリアファイルの重さは23gで、弊社は年間5000枚程度使用しているため、年間のクリアファイルのから排出されるCO₂排出量は592.3㎏となります。
杉の木1本の間CO₂吸収量(林野庁 推定)は14㎏ということなので、約42本分となります。
※クリアファイルを工場から輸送する際のCO₂排出量及び、廃棄後の処理場までの輸送に伴うCO₂排出量は考慮していません。
紙ファイルのCO₂排出量を算定してみた
クリアファイルと同じように、紙ファイルについても、原料から廃棄までのCO₂排出量を算定してみました。
原材料から生産までの排出原単位
弊社がポリプロピレン製のクリアファイルの代わりに導入した紙ファイルは古紙でできています。紙の種類を確認すると未晒包装紙ということでした。未晒包装紙のCO₂排出量を調べたところ、原材料から生産までのCO₂排出量のデータがありました。1370㎏-CO₂/t※2を使用して算定してみました。
※2 出典元に記載されている未晒包装紙の原料が古紙とは限らないため、最適な排出原単位とは必ずしも言えないことをご了承ください。
出典:紙・板紙のライフサイクルにおける CO2排出量
廃棄(古紙リサイクル)の排出原単位
紙ファイルを古紙として廃棄した場合、一般的な古紙回収の流通に載って処理されると想定し、環境省の排出原単位データベースより、紙くずの排出原単位0.011t-CO₂/tを使ってみました。※紙くずが製紙産業でリサイクルされるとして整理されたデータ
1枚の紙ファイルの重さは13.5gなので、
1枚当たり18.64g-CO₂ 年間5000枚使用すると仮定すると、93.2kgのCO₂排出量となります。
出典:環境省 排出原単位 データベース
クリアファイルと紙ファイル、どちらが、CO₂削減になる?
上記の算定方法の結果では、クリアファイル1枚当たり118.45g-CO₂に対して、紙ファイル1枚当たり18.64g-CO₂となり、ポリプロピレンのクリアファイルの方が紙ファイルより約6.4倍のCO₂を排出していることになります。
※LCAの専門家ではないので、排出原単位の選択が適切ではない可能性があることをご了承ください。
脱プラの目的はCO₂削減だけじゃない
今回、2つの製品のCO₂排出量を調査してみました。前提条件が違う部分も多々あるので、一概に言えませんが、弊社ではやはり、ポリプロピレンの製のクリアファイルから紙ファイルにすることが、脱炭素化につながると判断し、切り替えを実施しました。
原料採取から廃棄までのCO₂排出量を一つの軸にする考え方はありますが、そもそも紙の原料は木材で、木材は大気中のCO₂を吸収したものなので、それを最終的に焼却処分しても、プラスマイナス0、つまりカーボンニュートラルと言えるかもしれません。
また、プラスチックを使わないことの意義は、温室効果ガス削減だけでなく、自然界に流出する量を減らすことにもあります。
近年頻発、激甚化する洪水等の災害時に、生活の中で使うプラスチック製品がやむを得ず海へ流れてしまうことは、これまでも、そしてこれからも発生する事実です。
海洋生物や海洋環境に悪影響が出るプラスチックを、できる限り生活の中からなくしていくことが、温室効果ガス削減と同等に大切なことだと考えます。
最後に
脱プラスチックの取り組みは、様々な組織や企業で始まっています。アパレル関係のお店ではプラスチック袋を紙袋にしている所も増えました。一方で、プラスチックじゃなければ何でもいいのか、というものではありません。
紙袋の原料が熱帯雨林を伐採してできたバージンパルプで、紙袋を使った後、古紙ではなく燃えるゴミとして廃棄してしまったら、その使用頻度により、プラスチックよりも多くのCO₂を排出することになる可能性もあります。
クリアファイルもそうですが、まずは使用頻度を減らし、何度も使いまわすなどして、使い捨てしないことが大切です。プラスチックは本来丈夫で使いやすい素材なので、1枚のクリアファイルを10年、20年使えば、紙ファイルを使い捨てするよりもずっとCO₂排出量を抑えられるかもしれません。
今回、弊社が紙ファイルに切り替えたことで、プラスチックの使用頻度を減らし、廃棄量を減らし、温室効果ガスの削減にもつながればと考えています。
また、紙ファイルを手にした方々が、今回の脱プラ(プラスチックファイルから紙ファイルへの切替)について、どんな考え方で、何を重視したのか、それがどう脱炭素につながっていくのか、考えるきっかけになれば幸いです。
※参考:一般社団法人プラスチック循環利用協会
プラスチックリサイクルの基礎知識 2021
※2023年5月24日に一部の数値を修正致しました。