紫外線とその殺菌効果についてやさしく解説する【紫外線の殺菌効果解説シリーズ】の第二弾となる(2)「紫外線の性質とその殺菌効果について」です!さっそく始めましょう。
紫外線が殺菌効果を示すのは、平たくいえば紫外線が菌などの微生物にダメージを与えるからです。
紫外線による微生物へのダメージは、大きく分けて
- UV-CをDNAが吸収することによるDNA破壊。
- UV-AやUV-Bを細胞内にある物質が吸収することで発生する活性酸素が、周辺の組織を破壊する。
の二つがあります。
よく理解するために、まず、紫外線などの電磁波はエネルギーを持っている、という話から始めたいと思います。
目次
紫外線を知る上で大切な「電磁波のエネルギー」
波というのはエネルギーを持ちます。海の波に体を持っていかれるという経験をしたことがある人は多いでしょう。縄跳びをうねらせて波をつくるときのことを想像してみてください。波のうねりを作るには、腕を動かしてエネルギーを縄跳びに与えなければならないのです。
『波長』が小さければ小さいほどエネルギーが大きくなる
電磁波は波長が短ければ短いほど、エネルギーが大きくなります。
波長が短いとは、波のうねりがたくさんあるということです。
縄跳びをうねらせてたくさんのうねりをつくるとき、激しく手を動かす必要がありますね。そのイメージです。うねりがたくさんあるということは、大きなエネルギーを持っているということです。
放射線やガンマ線 = 波長が非常に小さい = たくさんのエネルギーのある = なんか怖い
例えば「放射線」という言葉を聞いたことがあると思います。放射線にもいくつか種類がありますが、そのうちの一つ、ガンマ線は波長が非常に小さい電磁波です 。その波長は、0.01 nm以下です。
ガンマ線は可視光である青色と比べると『波長』の長さは1000分の1以下です。つまり青色の波1個に対して1000個も波があるということになります。
放射線が危険なのは、波長が非常に小さいつまりは大きなエネルギーを持っていて、放射線が体に当たってしまうと、細胞を破壊したり染色体を破壊したりする恐れがあるためです。
UV-CをDNAが吸収することによるDNA破壊。
殺菌効果についての話に戻します。UV-Cの紫外線は微生物や菌の細胞、ウイルスなどが持つDNAやRNAに吸収される性質があります。微生物や菌、ウイルスの細胞へのダメージにおいて最も強力なものが、DNAへのUV-C紫外線吸収です。
DNAは命の源。
DNAというのは微生物のみならず、私たち人間も含めた生物すべてが、生きる上で必要なものです。生物はたくさんの細胞が集まってできていますが、その細胞をつくるのがDNAです。
身長が数十センチメートルしかない赤ちゃんも、DNAがせっせと細胞を作ることで成長して大人の体になっていくわけです。DNAは細胞を作り、作った細胞の中に存在し続けて、新たな細胞を作りだします。
DNAが壊れると生物は生きていけない。
そんなDNAは、UV-Cをよく吸収します。先ほども言ったように、電磁波はエネルギーを持っていますから、吸収する、とは、エネルギーを受け取る、ということです。
そのエネルギーによってDNAが破壊されてしまうのです。そうすると生物は生きていけなくなります。これが紫外線の殺菌作用の正体です。
DNAは、上の図のように二重螺旋を形成しています。まるで梯子がねじれているような形です。ここにUV-Cが吸収されると二重螺旋を維持できないようになってしまいます。螺旋梯子の間にある線の上と下がくっついてしまい、本来の働きができなくなるのです。(この物質と物質がくっついたものを“二量体“と呼びます。)
DNAは、UV-Cの中でも波長が260 nmくらいのものを特に吸収しやすい。
UV-Cといっても波長が200から280 nmと幅が広いです。実は、波長によってDNAやRNAへの吸収しやすさというのがあります。これまでの研究によってDNAはUV-C の中でも260 nm付近の波長をもつものをよく吸収する、ということがわかっています。
医療機器などにおいて紫外線を殺菌に利用する際には260 nm付近の波長をもつUV-Cを使うことが多いです。微生物や菌、ウイルスなどの細胞のDNAやRNAが最もよく吸収する『波長』なわけですから、最もよくDNAやRNAを破壊するのです。
UV-AやUV-Bを細胞が吸収することによる細胞破壊
DNAはUV-Cをよく吸収しますが、細胞に含まれる物質には、UV-AやUV-Bをよく吸収するものがあります。それらはエネルギーを受け取ると、DNAのように破壊されたり、細胞の外にエネルギーを吐き出したりします。
細胞の物質を破壊する。
大量にダメージを受ければ細胞が死んでしまいます。しかし、DNAより重要な物質は無いので、DNAの破壊ほど重大なダメージではありません。
細胞の外にエネルギーを吐き出す。
受け取ったエネルギーを、外に活性酸素の形で吐き出すことがあります。活性酸素は要するにエネルギーを持った暴れん坊で、まわりに悪影響を与えることがあります。が、DNAの破壊ほど重大なダメージではありません。
特定の波長のものが特定の物質に吸収される、というのが紫外線の本質
紫外線は微生物や人体に影響を与えますが、そういった影響はすべて、紫外線が吸収されてエネルギーを渡すことで起こります。
DNAという特定の物質は、260 nmという特定の波長の紫外線をよく吸収する、といったように特定の『波長』のものが特定の物質に吸収されやすいという特徴を理解しておくことが、紫外線による殺菌を理解することで最も重要です。
人体への影響を理解する上でも重要なことなので、是非覚えておきましょう。
■ まとめ ■
- 電磁波はエネルギーをもつ。
- 紫外線は、DNAや、細胞に含まれる他の物質に吸収されることで、殺菌作用を示す。
- 紫外線の本質は吸収されることにあり!
いかがだったでしょうか?これで殺菌効果についての説明は終わります。次回は紫外線の人体への影響を説明していきます!
【紫外線の殺菌効果解説シリーズ(2)「紫外線の性質と殺菌効果について」】(終)
シリーズ案内
(1)「そもそも紫外線ってなんだっけ?」
https://www.ecology-plan.co.jp/information/13696/
(2)「紫外線の性質は?その殺菌効果について」
https://www.ecology-plan.co.jp/information/13920/
(3)「紫外線の人体への影響は?」
https://www.ecology-plan.co.jp/information/14468/
(4)「紫外線の安全基準値について考えてみよう」
近日公開予定。