温室効果ガスを排出しないクリーンなエネルギー源として燃料電池が注目されています。
燃料”電池”という言葉から、利用に制限のある一時的な電源というイメージがありますが、燃料電池は水素などを”燃料”として電力を生み出す装置であり、電池というよりむしろ”発電機”です。
一般的な発電機は、燃料の【化学エネルギー】を【熱エネルギー】に変え、さらにそれを【運動エネルギー】に変換し、そこから【電気エネルギー】にしています。一方、燃料電池は水素などの燃料の【化学エネルギー】を直接【電気エネルギー】に変換できるため、原理的に高い効率を誇ります。
燃料電池はその高い発電効率と排熱の利用により、停電時のための予備電源としての役割を果たすだけでなく、クリーンな常時供給の電源として利用でき、光熱費の削減にもつながります。
環境問題への関心が高まる中、国や都道府県からは環境保全効果の高い燃料電池の導入に対して支援が行われています。クリーンエネルギーへの転換を目指す方必見の補助金です。
燃料電池にも、その発電の仕組みの違いから、4つの主要な種類があります。
参考:国立環境研究所
今回紹介するのは、この中でも特に高い効率を誇り、近年(国内での製品化は2017年以降)実用化が進んでいるSOFC(固体酸化物形燃料電池)というタイプの業務用燃料電池です。
SOFCは東京都の「水素を活用したスマートエネルギーエリア形成推進事業(業務・産業部門)」の助成対象となっている燃料電池であり、導入に係る費用の最大2/3が助成されます。
受付期間 | 2021年3月31日まで |
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業務用燃料電池はエネファームのような家庭用燃料電池よりも発電出力が大きく、オフィスビルや工場などにも十分な電力を供給することができます。国内のメーカーでは京セラ、三菱パワー、三浦工業などにより実用化がなされています。
これらのメーカーのSOFCは発電に伴う排熱も利用するコージェネレーション型のシステムであり、総合効率は90%程度に達します。
一般的な火力発電の発電効率が、大規模な設備で効率よく発電しているにもかかわらず、50%程度であることを踏まえると、かなり高い効率であることがわかります。
SOFC(燃料電池)を発電機として導入するメリット
燃料電池は、外部から供給される水素と空気中の酸素の化学反応を利用して電気を取り出す装置です。
一般的な燃料電池は改質器という装置で天然ガスを改質※1して水素を得ますが、SOFCは他の燃料電池より運転温度が高く、この熱を利用して内部で改質反応を行うことができ、他の燃料電池に比べ効率の面で優位です。
また、水素と酸素を反応させて電気を取り出す過程において、電気のほかに熱も発生します。
上述のコージェネレーション型のSOFCはこの熱を給湯機などに利用するため、電気と熱を利用している多様な事業者様にとって魅力的な電源となります。燃料であるガスの化学エネルギーを最大限利用することで、温室効果ガスの排出量を抑制するだけでなく、電気代、ガス代の削減にもつながるのです。
※1 改質(改質反応)
天然ガス(炭化水素)と水を原料として水素を得る化学反応(水蒸気改質)のこと。例えば、都市ガスの主成分であるメタン(CH4)からは、
CH4 + H2O → CO + 3H2
という改質反応を行うことで、水素(H2)が得られます。
この反応を効率よく進めるためには高温が必要です。
独自の発電システムを抱える意義
多くの企業のBCP(事業継続計画)において、電力の継続的な供給は欠かせません。災害時には電力網の断絶により電力会社からの給電がストップする可能性が高く、復旧までの間、建物(工場)に電力を供給する発電機が必要です。
SOFCを日常的に電源の一部として利用していれば、停電時にもガスを備蓄している限りは発電を続けることができるため、BCPで定めた中核事業を継続させたり、データの損失を防いだりすることができます。
コージェネレーション型なら温水の利用も継続できるため、飲食店などにおいても事業継続の可能性が高まります。
このように、SOFCの導入はCO2排出量の削減に寄与するだけでなく、緊急事態における経営上のリスクの低減という防災上のメリットもあるのです。
【東京都】水素を活用したスマートエネルギーエリア形成推進事業(業務・産業部門)
東京都内の建築物に業務用燃料電池を設置する民間事業者の方は、設置に係る費用の最大2/3が助成されます。本記事で紹介したSOFCはこの助成金の対象となる燃料電池です。
助成対象経費 | 設計費、設備費、工事費、諸経費 |
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助成率 | 2/3 (国等の補助制度を併用する場合には、軽費の2/3からその額を控除した額) |
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上限 | 5kW超:3億3300万円 1.5~5kW:1300万円 |
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受付期間 | 2021年3月31日まで |
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詳細は「水素を活用したスマートエネルギーエリア形成推進事業(業務・産業部門)をご覧ください。
燃料電池の導入!お手伝いいたします
上述のように、常用電源としての燃料電池の導入には様々なメリットがあります。省エネ、省CO2効果が期待されるのみならず、排気ガスが非常に少ないこと、静音性に優れること、などの観点から設置場所の縛りが少なく、導入しやすいという利点があります。
価格が高いことがネックではありますが、燃料電池の普及を推進する行政の補助金を有効に使うことで、導入しやすくなっております。BCP(事業継続計画)の一環として検討する価値のある施策です。
BCPについてはこちらの記事もご参照ください。